大手ゼネコン現場トップによる背任事件はなぜ起こるのか

2025年に開催された大阪・関西万博の工事を巡り、下請け業者と共謀し水増した代金を会社に支払わせたとして、大手ゼネコンの現場トップが大阪府警に逮捕されたとの報道がされています。

大阪万博で工事費水増しか 竹中工務店の現場トップ逮捕、背任疑い - 日本経済新聞
2025年に開催された大阪・関西万博の工事を巡り、下請け業者と共謀し水増しした代金を竹中工務店に支払わせたとして、大阪府警は19日、同社の現場責任者だった男を背任容疑で逮捕した。水増し額は約1300万円とみられる。府警は同日、竹中工務店の本社ビル(大阪市中央区)を家宅捜索した。逮捕されたのは同社の元大阪本店総括作業所長...

逮捕された現場トップは、万博「大屋根リング」の一部工事を担うJV現場を担当していたとのことです。
建設工事では、もともと元請けの権限が強いうえ、このような国家的規模の工事では代金が高額となります。
チェックすることも難しく、不正が起こりやすい環境といえます。

今回の事件概要

大阪・関西万博の工事を巡る今回の事件では、次のような報道がされています。

  • 逮捕されたのは大手ゼネコンの元大阪本店総括作業所長で、万博JVのトップを務めた
  • 手口は、下請け業者と共謀した工事の発注代金の水増し
  • 水増した代金を逮捕者が勤務する大手ゼネコンに支払わせ、同額の損害を会社に与えた
  • 今回の逮捕容疑は約1,000万円であるが、被害金額は数千万円に上る見通し
  • 不正に得た資金は、リフォーム費用などに充てられていた疑いがある

ゼネコンの現場責任者は、下請けに対し、絶大な権限をもっています。
工事を受注したい業者も、不正と知りつつこれに逆らえない環境があります。
また、工事全体の金額が大きく、千万円単位の不正であっても気付きにくいという特徴もあります。

過去の事例でも

ゼネコンの上層部が下請け業者を利用し、資金を不正に得た事案は今回が初めてではありません。

例えば、2021年6月には、東日本大震災の復興事業に絡み、下請け業者から1億数千万円を受け取っていながら、税務申告をしていなかったとして、大手ゼネコンの元営業部長が所得税法違反で立件されています。

また、2022年11月にも中堅ゼネコンの元作業所長が下請け会社と共謀して水増請求を行い、これを山分けしていたとして大阪府警に特別背任容疑で逮捕されています。

私もこのような水増し、架空請求の事件捜査を捜査を担当したことがありますが、手口はほぼ共通しています。

不正を見つけるのは難しい

下請け会社を巻き込んだ水増し請求について、通常の社内チェックでこれを見抜くことはほぼ不可能です。

1人が行った不正取引であれば、発注額と支払額に差異が生じるため丁寧にチェックすれば見抜くことはできるかもしれません。
さらに、下請業者の帳簿を見ることができれば、ゼネコン側の発注額(経費)と、下請け側の売上額に差があるはずです。

しかし、ゼネコン側と下請けが共謀している場合、そこに齟齬は生まれません。

工事台帳、請求書には、工事内容、単価、金額が書いてありますが、その中で「水増し」を見抜くのは至難です。
一般的な単価はあっても、工事内容によってそれが微妙に変わることもあり、不正かどうかはそれだけではわかりません。
工事項目も膨大で、これをすべてチェックするのはほぼ不可能といえます。
大規模工事であれば、数量や単価を僅かに変えただけでも、大きな金額になります。

今回の関西・大阪万博の不正発覚の端緒は不明ですが、一般的には税務調査、あるいは、関係者からの情報提供によることになるはずです。

帳簿や請求書のチェックだけで不正を見つけられた事例は、かなり少ないのではないかと思います。

本日のまとめ

大手ゼネコンによる、下請け会社との不正事件は、金額的にもまた社会的な影響にも大きなものがあります。

しかし、帳簿のチェックなどで不正を見つけるのは実際かなり難しいというのが実情です。

発見するよりも、未然に防ぐことに力点を置くのが現実的です。
今回、このような事件検挙は、一つの抑止力にはなります。
報道からもわかるとおり、共謀した下請け業者も共犯として検挙されることがあります。
また、コンプライアンス意識の向上、ジョブローテーション、内部通報の実効性向上なども有効な方法かもしれません。

このような不正事件を教訓に、不正防止に注力するのが効果的と感じます。