先週末は、久しぶりに小説と映画(ビデオ)にどっぷりはまって過ごしました。
阿部公房の「砂の女」です。
阿部公房生誕100年
昨年2024年は阿部公房生誕100年。
神奈川近代文学館では、「阿部公房展 21世紀文学の基軸」が開催されていました。
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阿部公房の名前は知ってはいても、読んだことはない。
そのような方も多いのではないかと思います。
私もその一人でした。
ポスターにはワープロが写っています。
昭和59年に刊行された「方舟さくら丸」は、日本で初めてワープロで書かれた小説といわれています。
ワープロで文書をつくること自体、当時としては画期的。
ここにも時代の先進性を窺えます。
小説「砂の女」
文学館で知った阿部公房。
まだ、著書は1冊しか読んではいませんが、「砂の女」は最近読んだ小説の中で間違いなく最高です。
冒頭が
──罰がなければ、逃げるたのしみもない──
この一文が小説全体を象徴しています。
アマゾンでの紹介文は
「砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。」
となっています。
「砂の女」
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昆虫採集に出かけた男が砂の穴から脱出できるのか。
サスペンスとして取り出しただけでも十分楽しめるストーリー性があります。
読んでいるうちに、男と自分が同期していく錯覚を感じながら、
- 砂の意味
- 果てることのない砂掻き作業
- 村人の存在
- 逃げること
- 「砂の女」との関係
- 世間からの隔絶
- 生活への順応
など自然と思考の深みにはまっていくのをおぼえます。
生活、人生を根本から考えさせられる小説。
少なくとも、私には、そのように感じました。
映画もよかった
「砂の女」は小説だけでも十分読み応えがあります。
小説と同じくらい見応えがあるのが、映画版「砂の女」。
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等高線で囲まれた地形と押された印鑑、通勤電車の音に続き、クローズアップしたミクロの砂からマクロの砂地へ移る冒頭。
ずんずんと期待が高まります。
- 脚本 阿部公房
- 監督 勅使河原宏
- 音楽 武満徹
- 男 岡田英次
- 砂の女 岸田今日子
の面々。
映画は小説の後に制作され、時系列的には「小説の映画化」にはなります。
ただ、両者をみると「映画の小説化」と言ってもいい感じがします。
おそらく、映画にあるような情景を思い浮かべながらの執筆だったのでしょう。
小説と映画の両方をおすすめします。
本日のまとめ
たまたま用事があった横浜で知った阿部公房。
今は「箱男」を読書中。
現実と非現実の曖昧さ、独特の比喩表現、独特な世界観。
仕事の合間に読んでいます。