公務員で株、投資信託の投資をしている方は多いようですが(別記事→公務員は株式投資をするべきか)、投機商品取引をしている職員も少なからずいるようです。
投機の話をするまえに、投機と投資の違いについて、生成AIに対比表をつくってもらいました。
投機 | 投資 | |
目的 | 短期的な価格変動に注目し、その価格の差額を利益とする | 中長期的な視点で収益を得る |
期間 | 短期 | 中長期 |
利益の形 | 価格の差額 | 売買による値上がり益、配当金・株主優待、家賃収入等 |
リスク | 短期間で大きな損失を生んでしまうリスクがある | 元本割れするリスクがあるが、長期的な視野で見れば、企業の成長や経済成長へつながる |
例 | 株式の信用取引、株価指数の先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替証拠金取引、CFD取引、暗号資産取引 | 株式や債券、投資信託などの金融資産や不動産 |
一般的に行われているのが、例にある外国為替証拠金取引(FX)、暗号資産、株の信用取引です。
公務員がこのような投機商品で失敗した事例は数多くあるようです。
もちろん、利益を得たケースもあるかと思います。
どうしても表面化するのは失敗事例なので、損失が目立つだけかもしれません。
また財務捜査官として不正に発展した損失を多く見てきたという事情もありそうです。
それでも公務員は投機商品取引に不向きなように思います。
その理由を考えてみました。
公務員と投機商品
投機商品の特徴は、上の表にあるように
- 短期の価格変動差額で利益を得ることが目的
- 大きな損失が生じるリスクも高い
という点にあります。
自営等に該当しない範囲で勤務時間外に行うのであれば、一般的には副業・兼業に該当しないものと思われます。
投機商品は、値動きが的中すれば大きく儲けることも可能です。
逆に作用すれば、大きく損をすることもあります。
これは、投機商品をする際に十分理解しているはずです。
公務員が投機に向いていない理由
値動きを絶えずチェックする必要がある
投機商品は、値動きが激しい点に特徴があります。
主要経済指標の発表、国際的な大事件があれば相場が大きく変動することは珍しくありません。
そうすると、必然的に常に相場を見ている必要があります。
暗号資産や外国為替の値動きは激しく、日中取引ができな公務員が行うには不利です。
値動きが気になると、日中勤務時間中に取引をするケースもでています。
出張移動中の列車内や職場のトイレで自分のスマートフォンを使い勤務時間中に4千回超の株取引をしていたとして、税務職員が職務専念義務違反などで停職1カ月の懲戒処分を受けた事例もあります。
やはり値動きが気になったのでしょうか。
睡眠時間が削られる
では、日中できなければ、帰宅後できるか。
こうなると、仕事で疲れて、取引に参加するということになります。
警察官のように当直勤務の翌日、非番の日も頭が働きません。
疲れた頭で刺激の強い取引をするので、冷静な判断ができなくなります。
また、夜の取引は終わりの時間が決められないので、睡眠時間を削ることになります。
本業にも支障がでてきてしまいます。
税務申告でペナルティーを受ける可能性
いくら副収入自体に問題がなくても、税金に問題があれば処分される可能性があります。
納税が国民の義務であることは、公務員として当然の常識です。
もちろん、税金の申告が間違っていたからといって、すべてが問題になるわけではありません。
- 年末調整で扶養の範囲を間違えていた
- ふるさと納税の計算が違っていた
という場合は、うっかりミス。
通常は過失なので、適切に修正すれば問題ないはずです。
一方で、所得(利益)を認識しながら税務申告をしないというのは、税法違反となり処分対象となりえます。
過去の事例でも
- 海外の複数のオンラインカジノで2億円以上を賭け収益を税務申告していなかったとして、税務署職員が停職3か月の懲戒処分
- 相続税、贈与税の不申告で国税職員が懲戒免職
- 馬券収入3億円を申告していなかった市役所職員が懲戒免職
などの処分を受けています。
暗号資産、FXで所得が出た場合には、税務申告も必要となります。
投機商品取引による税務上の扱いは、これまで何度も税制改正が行われています。
常に最新の内容で申告するようアップデートを忘れないことが大切です。
投機商品共通の問題点
ロスカットルールの誤解
暗号資産、FXともロスカットがあるので、投資金額以上に損をしないと言われます。
これを「ロスカットがあるから安全」と誤解する方がいます。
ロスカットルールは、相場が大きく変動したときに即時に対応できない可能性があり、完全に損失を限定できるわけではありません。
また、ロスカットルールで損失が抑えられるのは、その取引だけです。
ロスカットが働いたと言うことは、取引で損失が生じたということ。
その損失を取り戻そうと、再度取引をすればさらに損失が膨らみます。
考えてみれば、パチンコ、競馬も、投じた資金以上に損をしないというのは同じです。
1万円でパチンコをしても、1万円以上損をすることはありません。
競馬で10万円賭けても、それ以上に損はしません。
しかし、社会にギャンブルで大損をした人は大勢います。
それは、パチンコや競馬で損をしても、次から次にお金を注ぎ込んでしまうからです。
これは、暗号資産、FXも同様です。
いくらロスカットルールがあっても、損失を取り戻そうとして次々にお金を使えば、損は大きくなります。
人間の心理面
近年、経済学の世界で行動経済学が盛んです。
行動経済学では、従来の経済学に人間の心裡を加えた点に特徴があり、理論と実践の両面からアプローチしています。
投機商品に当てはまりそうなのは、
- プロスペクト理論
人は損失を回避する心理が働き、損失が出るとその損を取り戻そうと行動する傾向のことをいいます。
損をしてもやめられない理由の一つとされています。
- 最終レース効果
最終レースでは損を取り戻そうと、穴馬に賭ける人たちが増えることをいいます。
人は少しでも損が出ると慎重な判断ができなくなり、これを埋めようと一か八かの勝負に出てしまいがちです。
またその際、勝つ確率を高めに見積もる傾向にあるようです。
- ハウスマネー効果
ギャンブルで得たお金は、浪費しやすいということです。
ここでのハウスとは、カジノのこと。
仕事をして得た10万円でも、ギャンブルで得た10万円でも客観的には同価値です。
しかし、人は、仕事で得たお金は慎重に使うのに、ギャンブルで得たお金は浪費しがち。
投機商品で利益があがっても、これを浪費してしまえば損をしたときの穴埋めに使うことはできません。
といった理論があります。
これらは、自分の経験値からもわかることです。
本日のまとめ
このように公務員には投機取引は向いていないように思います。
実際に、投機商品で損を出して非違事案に発展する事例も少なからずあります。
もちろん、自分の責任で投機商品で取引をすることは自由です。
ただ損失リスクだけは、十分に理解しておかないと危険な目にあうかと思います。