財務捜査で覚える違和感 ~ 預金口座(4)

預金口座の動きは、通常、入金・出金の動きに一定の流れがあります。

会社の口座であれば、売掛金の回収で入金があり、その後仕入代金の支払いや給料、経費の支払いなどを繰り返しながら残高が変動していきます。

個人の口座であれば、給料が入金され、その後生活費の引出しや公共料金の引き落としがされていきます。

これに対し、入金→即出金という動きを繰り返す口座もあります。

その1 入金都度の現金を引き出し

口座の入出金の数字がジグザグになるパターンです。
「稲妻型」「ジグザグ型」ともいわれるようです。

入金がされるたびに引き出しがされています。

その2 入金がまとまったら現金を引き出し

一方、一定期間の入金がまとまったら引き出しをすることもあります。
引き出しのタイミングは毎週金曜日などのように規則性があることも見られます。
数字の動きから、「逆L字型」という人もいます。

さらにもう少し範囲を広げてみると、引き出しの周期がわかるかもしれません。

このような動きの理由

このような口座取引をする理由としては、いくつか考えられます。

  1. 差押を免れるため
    税金などを滞納しており、残高をおいておくと差押を受ける可能性がある場合、預金残高を少なくしておくといったことは考えられます。
    上に示したようなきれいなジグザグ型、逆L字型でなくても、ある程度残高が溜まったタイミングで預金を引き出すことは見られます。
  2. 集めた資金を現金で使わなくてはならない
    そのような取引があるかはわかりませんが、可能性としては考えられます。
  3. 使途を隠蔽するため
    他の理由として、使途をわからなくするためということもあります。
    口座から他の口座へ振り込めば、資金移動の状況はトレースされてしまいます。
    いったん現金で引き出して、そのまま使ったり、現金を保管することも可能です。

これ以外にも理由はあるかもしれません。

さらに、

  • 入金者の共通点を見つける
  • 金額から取引内容を推察する
  • ATMの引出し場所、時刻から考える
  • 調査対象期間をもっと広げる

など調べていけば、理由が徐々に明らかになりそうです。

本日のまとめ

今回紹介した取引パターンは、それ自体違法なものではありません。

しかし、通常の取引と比べると不自然です。
今回のような取引は少し極端ですが、違和感をつかむことは重要だと思います。