これから個人事業を開業しようとする方から、帳簿や申告について相談を受けることがあります。
多い質問としては、「青色申告にした方がいいですか」というもの。
これに関しては、白色申告でも記帳は必要なため、税務上の特典のある青色申告をお勧めしています。
次の質問は、帳簿のつけ方について。
簡易帳簿の場合、青色申告特別控除は10万円。
複式簿記の場合、青色申告特別控除は55万または65万円。
両者に大きな違いが出ます。
青色申告控除額
青色申告特別控除には、10万、55万、65万の3種類があります。
10万控除の場合、簡易帳簿で記帳を行い、これを基に損益計算書を作成し、確定申告を行います。
55万控除、65万控除の場合、複式簿記の方式で記帳を行い、損益計算書、貸借対照表を作成する必要があります。
帳簿のつけ方でいえば、10万円控除なら簡易帳簿、55万円、65万円控除なら複式簿記となります。
複式簿記となると会計ソフトを使うのが一般的です。
※青色申告制度の内容や特別控除の違いなど詳細については、国税庁のHPを参照してください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
控除金額が大きくなると、その分税金も安くなります。
できれば65万円控除になるように、複式簿記の方法で帳簿を作成し申告を行うのが理想です。
開業当初はどうか
複式簿記のつけ方に抵抗がない、あるいは、会計ソフトを使うことを前提としている場合には、65万円控除となるよう帳簿を作成しe-Taxで申告するのがお勧めです。
ただ、実際にはパソコンや帳簿記入を不得手としている方もいます。
そうでなかったとしても、開業当初は営業を軌道に乗せるのが最優先。
経理に割ける時間も限られています。
そのような方が会計ソフトを使い、複式簿記で帳簿を作るのは負担でしかありません。
また、そもそもの話ですが、青色申告特別控除は所得金額がプラスになった場合に使える制度です。
開業からしばらくの間は、赤字となってしまうことがほとんどです。
それであれば、控除金額を大きくしてもあまり意味がありません。
青色申告のメリットの一つに、今年の純損失を翌年以後3年間にわたって繰り越せる制度があります。
まずは10万円控除であっても、確実に青色申告の特典を受けるというのも一つの方法だと思います。
簡易帳簿であれば、税務署の手引きを見ながら申告まで自力で行うのも難しいことではありません。
また、帳簿を付ける習慣が身に着けば、会計ソフトを使った複式簿記の移行もスムーズに進むはずです。
規模が大きくなった場合
次第に事業が拡大すれば、10万円の特別控除では控除しきれないようになってきます。
黒字額が大きくなるようであれば、多少面倒でも複式簿記に切り換えて65万円控除を適用するのがお勧めということになります。
ご自身で帳簿を付けるのが難しいようであれば、税理士に依頼しても良いかもしれません。
本日のまとめ
開業当初はやることも多く、経理まで手が回らないこともあります。
また、多くの場合開業初年は赤字となるため、65万円を控除するだけの所得がないことも珍しくありません。
それであれば、簡易帳簿で事務をシンプルにし、10万円の控除でも十分かもしれません。
その場合でも、日々帳簿を付けることは大切です。
この習慣を身に着ければ、複式簿記へ移行したときのハードルも低いと思います。