従業員の不正で盲点となるのは、会社が管理していない資金です。
例えば親睦会費、旅行積立金など。
会社の資金であれば、経理担当者がいたり、会社として管理をしています。
また、正規の会計監査もあるはずです。
それがないのが、会社管理外の資金です。
親睦会費の横領事例
親睦会費の横領事例は実際かなりあります。
手元のスクラップ記事をみても、
- 税務職員が親睦会費を26万円無断持ち出し
- 市役所職員が親睦会費40万円以上を着服
- 自動車製造会社の従業員が親睦会費97万円を横領
親睦会費ではありませんが、高校の教員が修学旅行の積立金930万円を横領したなどの事件報道もあります。
管理がずさんとなる理由
懇親会費は簿外資産
親睦会費は、会社とは別管理。
あくまでも任意の組織です。
もちろん会社の決算書にも登場しません。
しかし、実質的に会社の親睦会は強制加入。
加入しますかと聞かれたこともありません。
会費徴収も給与天引きが多いはずです。
会社が関与しながらも、会社の預金ではないという微妙な立ち位置です。
担当しているのは1人が多い
職場の規模にもよりますが、組織が大きければ100万円単位の金額にもなるはずです。
預金口座から現金を引き出したり、領収書を保存して帳簿に記載するのはかなりの手間。
業務とは別に時間外に行うことになります。
この業務を進んで引き受ける人は、それほど多くはありません。
担当が1人であることがほとんどです。
不正防止の基本は、担当者と管理者を分離すること。
1人では預金口座から現金を引き出せないことにするのが基本。
しかし、懇親会費の場合には、担当が通帳と銀行印を預かっていることが珍しくありません。
あるいは、預金に入れずに現金で管理していることも。
これで不正が起こらないことが不思議です。
監査があまい
懇親会費についても会則で会計監査をすることになっているかもしれません。
しかし、実際にはその監査が省略されてたり、いい加減であることも多いようです。
仲間内の職員に、厳しいチェックをしたくはありません。
「通帳と金庫は自宅にある」
「帳簿を家に忘れてきた」
と言われたときに、自宅から持って来るように強く言えるとは限りません。
大丈夫だろうという、信頼の原則で会計監査と称することもあるようです。
帳簿を付けない・わからない
経理を長年している者からすれば、帳簿付けは難しいことではありません。
入金、出金の都度、帳簿に記入するだけ。
そして、これらの取引について、裏付けとなる領収書、請求書を保管すれば問題ありません。
親睦会なら取引件数も少ないので、それほど手間でもありません。
しかし、このような業務をしたことがないと、面倒に思うことがあるようです。
まとめて付けようと思っているうちに、書類が溜まってしまいます。
帳簿と手元の現金が合わない、何か月も帳簿をつけていない、となると資金が管理不能となります。
公私混同が起こる原因です。
どうしたら良いか
預金口座を通過させる
取引を可視化するのは、担当者が自分の業務を正しく行っていることの証明になります。
また、チェックをする方も、客観資料があるので確実に行えます。
すべての取引を預金口座を通じて行うことは、不正防止の基本です。
支払いは預金口座からの振込とするのが原則です。
少額経費、慶弔費など現金払いとなることがあっても、あくまでも例外です。
会社が関与をする
懇親会費は会社の簿外資産ではあります。
とはいえ、会社が無関係なわけでもありません。
この曖昧な位置づけが、不正の要因にもなっています。
会社が多少でも関与すれば、不正は起こりにくくなります。
- 印鑑と通帳は、会社の金庫に保管する
- 会計監査担当者は、経理課員とする
といったことだけでも不正防止には役立ちます。
本日のまとめ
懇親会費の横領報道は、少なからずあります。
大きな事件として記憶にあるのは、破綻した英会話学校の元社長による事件です。
社員積立金3億2,000万円を横領したとして逮捕されています。
会社規模が大きくなると、積立金の金額もかなりの金額になるようです。
報道によると、この積立金の通帳と印鑑も元社長が管理していたとあります。
通帳と印鑑をともに管理し、チェック体制もなければ横領が起こる可能性は格段に高くなる典型的な事例です。