2025年5月21日付のの日本経済新聞記事によると「優良企業」とされていた会社が、多重リースによる不正を働いていた可能性があるとのこと。

リース契約を利用した不正には、どこか既視感があります。
過去にも繰り返し行われてきた手口です。
不正リース契約とは
新聞記事にもありますが、リース契約を使った不正の手口とは、次のようなものがあります。
- すでにあるリース契約に重ねて新たにリース契約を締結する「多重リース」
- 存在しない物件にリース契約を結ぶ「架空リース」
- 本来の物件価格に水増をする「水増リース」
などです。
今回疑われる不正リースの方法は、主に多重リースのようですが、一部には架空・水増リースもあるようです。
リース契約の仕組み
通常、リース契約は、
- 使用者(企業)がリース物件をサプライヤーから調達
- 使用者がリース会社とリース契約を結ぶ
- リース会社がサプライヤーに物件代金を支払う
- 使用者は、リース会社にリース料を支払う
というプロセスをたどります。
例えば、1億円の機械をリースで導入したい場合、機械を選定したうえで、リース会社とリース契約を結びます。
1億円の代金は、リース会社から機械を製作した会社(サプライヤー)に支払われます。
企業は1億円をリース期間を通じて分割して返済する、という仕組みです。
不正リースが起こる理由
すでに特定の物件についてリースをしているのに、別のリース会社に対しても「新たにリースをしたい」として契約すれば多重リースとなります。
このような多重リースを組んだとしても、本来、使用者である会社にお金が入ってくるわけではありません。
そこで、リース会社からサプライヤーに支払われた物件代金を、会社に入金させるプロセスが必要となります。
つまり、多重リースは、サプライヤーを巻き込まないと成立しない仕組みになっています。
機械のように高額物品を導入する場合、銀行借入で資金を調達することも可能です。
ただ、銀行と付き合いがなかったり、審査に時間がかかるといった場合、リースの方が迅速のこともあります。
リース物件という担保もあるため、リース会社の審査は銀行よりも厳しくない場合があります。
このようなリース契約の特性が、不正リースにつながっているのだろうと思います。
本日のまとめ
記事を読んで、「また不正リースか」と感じました。
財務捜査の経験から言えば、不正の手口には一定のパターンがあります。
その一つがリース契約を悪用したものです。
過去には、埼玉県警が検挙した事例もあります。

記事のとおり不正があったのであれば、きちんとした調査・捜査が進むことを期待しています。