不正リース契約報道にみる既視感

2025年5月21日付のの日本経済新聞記事によると「優良企業」とされていた会社が、多重リースによる不正を働いていた可能性があるとのこと。

破綻の水晶デバイス・日興電子 多重リースで「優良企業」偽装 - 日本経済新聞
年の瀬も迫る2024年12月25日、地域の優良企業とみられていた水晶デバイスメーカーの日興電子(東京都府中市)は突如として事業を停止した。27日には東京地裁へ自己破産を申請、25年1月9日には破産手続きの開始決定を受けた。債権者数約130名。負債総額は約76億円で、24年度に発生した都内の倒産ではトップテンに入る規模。...

リース契約を利用した不正には、どこか既視感があります。
過去にも繰り返し行われてきた手口です。

不正リース契約とは

新聞記事にもありますが、リース契約を使った不正の手口とは、次のようなものがあります。

  • すでにあるリース契約に重ねて新たにリース契約を締結する「多重リース」
  • 存在しない物件にリース契約を結ぶ「架空リース」
  • 本来の物件価格に水増をする「水増リース」

などです。

今回疑われる不正リースの方法は、主に多重リースのようですが、一部には架空・水増リースもあるようです。

リース契約の仕組み

通常、リース契約は、

  • 使用者(企業)がリース物件をサプライヤーから調達
  • 使用者がリース会社とリース契約を結ぶ
  • リース会社がサプライヤーに物件代金を支払う
  • 使用者は、リース会社にリース料を支払う

というプロセスをたどります。

例えば、1億円の機械をリースで導入したい場合、機械を選定したうえで、リース会社とリース契約を結びます。
1億円の代金は、リース会社から機械を製作した会社(サプライヤー)に支払われます。
企業は1億円をリース期間を通じて分割して返済する、という仕組みです。

不正リースが起こる理由

すでに特定の物件についてリースをしているのに、別のリース会社に対しても「新たにリースをしたい」として契約すれば多重リースとなります。

このような多重リースを組んだとしても、本来、使用者である会社にお金が入ってくるわけではありません。
そこで、リース会社からサプライヤーに支払われた物件代金を、会社に入金させるプロセスが必要となります。
つまり、多重リースは、サプライヤーを巻き込まないと成立しない仕組みになっています。

機械のように高額物品を導入する場合、銀行借入で資金を調達することも可能です。
ただ、銀行と付き合いがなかったり、審査に時間がかかるといった場合、リースの方が迅速のこともあります。
リース物件という担保もあるため、リース会社の審査は銀行よりも厳しくない場合があります。

このようなリース契約の特性が、不正リースにつながっているのだろうと思います。

本日のまとめ

記事を読んで、「また不正リースか」と感じました。
財務捜査の経験から言えば、不正の手口には一定のパターンがあります。
その一つがリース契約を悪用したものです。

過去には、埼玉県警が検挙した事例もあります。

やきとりのひびき、再建多難の道のり 粉飾や不正リース発覚 - 日本経済新聞
民事再生法の適用を20日に申請したやきとりチェーン運営のひびき(埼玉県川越市)の経営再建が難航しそうだ。経営破綻の主な要因として経営陣が当初説明していた人件費などの経費増大に加え、不適切な会計処理やリース契約で資金を調達していたことがわかった。再生計画案に賛否を投じる債権者らの判断に影響が出かねない。2018年6月期の...

記事のとおり不正があったのであれば、きちんとした調査・捜査が進むことを期待しています。