犯罪が成立する前提として、犯意があることが必要です(過失犯を除きます)。
人の内心である意思をどのように立証するのか?
経済事件の場合、財務捜査による数字による解明が行われることがあります。
前提となるのは犯意
犯罪成立の前提には、いくつかの要件があります。
犯罪に問われないのは、正当防衛、心神喪失等があります。
一方、犯罪の成立に必要なのは犯意です。
故意ということもできます。
犯意と故意とは異なるという説もありますが、このブログは研究目的ではないのでそこは触れないことにします。
犯意というのは、その犯罪を犯す意思のことです。
例えば、殺人罪であれば人を殺すという意思となります。
人がナイフで人を刺して殺してしまった場合、故意があれば殺人罪となります。
ただし、人を殺そうとする意思がなければ、
- 傷害致死罪
- 過失致死罪
の可能性があり、罪の重さも当然に違ってきます。
ナイフで人を刺して殺してしまった行為について、殺人罪なのか過失致死罪なのかが争われることは珍しくありません。
警察の捜査もその点が争われることを前提に
- 傷の場所
- 傷の深さ
- 傷の数
- 被害者と加害者の関係
- ナイフの事前準備有無
などを捜査することになります。
事前に購入してあったナイフで、心臓をめがけ、何度もナイフを刺している事実があれば殺意は認定されると思います。
詐欺罪の犯意
では、詐欺罪の犯意はどう考えるのか。
お金を貸したけれども返ってこない。
最初から返すつもりがなければ詐欺罪です。
しかし、返すつもりはあったけれども返せなかった場合には詐欺罪にはなりません。
事件でなければ、告訴の対象にもなりません。
お金が返ってこなかった側からみれば詐欺と映りますが、会社経営者が事業に失敗して返せないこともあります。
お金を借りた段階では、返すつもりがあれば犯意はないことになります。
一般的に、詐欺罪の犯意は
- 内容のウソ
- 借りた人の経済状況
- 使い道のウソ
といった事実から立証していくことになります。
内容のウソ
内容のウソとは、振り込め詐欺のように「オレだけど、小切手が入ったカバンをなくしてしまって・・・」、「○○市役所ですが、医療費の還付金が受け取れるのでATMで手続きをしてください」などの明らかな嘘。
これは嘘が明らかですから、犯意の立証の難易度は高くありません。
借りた人の経済状況
借りた人の経済状況とは、返済、支払のアテがあるのかということ。
例えば、無銭飲食の場合、無職、無収入で財布にお金がない状態で飲食すれば、最初から払うつもりがないことが推定できます(確定ではありません)。
同じように、会社が債務超過になっていて銀行からもサラ金からもお金が借りられず、返済のあてもないのに、その事実を隠してお金を借りた場合には詐欺罪に問われる可能性が高いと思われます。
会社の返済能力を立証するのは難しく、ここは財務捜査により解明することになります。
使い道のウソ
使い道というのは、何に使ったかということ。
「○○に投資しませんか?」といってお金を集めておきながら、自分の遊興費などに使っていればその投資話はウソだということになります。
過去には、エビの養殖事業という名目で投資資金を集めながら、実際にはエビ養殖などしていなかったとして詐欺に問われた事件もありました。
内容のウソと同様ですが、振り込め詐欺のような単純な手口ではないことが通常です。
集めたお金をすぐに遊興等に使っていれば簡単ですが、実際には資金移動が複雑となっていることもあり、財務捜査によって解明する場面が多いかと思います。
本日のまとめ
犯意という内心を立証するのは容易ではありません。
上にあげた詐欺の犯意については、単純化して説明しています。
被害金額、他の被害者の有無、申し向けた文言等も含めて判断されることになります。
財務捜査により犯意という内心を解明することもあるという事例の紹介でした。