大型連休後半の2日目。
自宅でビデオを見ながら過ごすのもいいですね。
先日プライムビデオでみた映画「紙の月」。
宮沢りえ演じる梅澤梨花が大学生におぼれ、銀行内部で次々と不正を働くストーリー。
銀行員の不正と銀行側の不手際。
4つの不正とミスが登場
思わず見入ってしまいました。
※ 以下の内容は、ネタバレとなります。ご注意ください。
預金証書の書損処理
主人公の梅澤梨花は、つい最近パート職員から昇格したばかり契約社員。
わかば銀行で外訪を担当しています。
梅澤は、以前から取引のある平林孝三から定期預金作成の依頼を受け、早速自宅を訪問。
200万円を預かります。
その帰り道、平林の孫にあたる大学生の光太に遭遇。
「学費のために借金をしている」という思いがけない打ち明け話。
平林は十分お金をもっている。それなのに、孫の学費は援助しない。
不憫に感じます。
モヤモヤした気持ちを抱えながら、営業店に戻る梅澤。
入金処理を行って、定期預金証書を作成。
ここまでは問題なし。
ところが、その手続きの最中、平林から「孫の光太にかかわるな」という抗議の電話が銀行にかかってきます。
光太に思い入れをしていた梅澤は「今の電話は定期預金のキャンセルの依頼で、今日中に現金を返しに行くことになった」と同僚に嘘を言い、光太のために着服に進みます。
顧客から定期預金のキャンセルがあれば、現金を払い戻し、いったん作成した定期預金証書を書損扱いにするのがルール。
- 書損の理由を簿冊に記入
- 定期預金証書に「書損」判を押す
- 定期預金証書を金庫に保管
というのが正規な処理。
ところが梅澤はこの処理を行わず、定期預金証書を服の下に隠し自宅に持ち帰ります。
後日平林には、持ち帰った証書をそのまま手渡し。
本物の証書なので、とりあえず不正がバレることはありません。
ここまでは、梅澤の不正。
ここに銀行側のチェック不備が加わります。
書損処理を利用した不正はちょっと考えれば、誰でも思いつくことです。
銀行は、書損扱いとした証書については、定期的に現物確認をするのがルール。
梅澤の支店では、このチェックがされていなかったため、不正の発覚が遅れてしまいます。
定期預金証書の偽造
次の手口は、梅澤が定期預金証書の原本を持ち帰り、これを自宅でコピーするというもの。
原本には発行印がないため、これを偽造します。
偽造の方法は、実際の印鑑を上からなぞりコピーの上からプリントごっこで印刷するというもの。
これで、偽造証書の完成です。
さすがに重要印刷物である定期預金証書が持ち出せるという設定には無理が感じられます。
銀行では証書の管理は厳重に行われており、持ち出すことはまず無理です。
それにコピー用紙と定期預金証書では、紙質が全然違います。
渡されたとしても、すぐにおかしいと分かるはず。
ここはドラマということしょう。
ただし、銀行以外の会社では、
- 誰でも金庫の暗証番号を知っている
- 金庫の管理ができていない
ということで重要書類が持ち出せるようになっていることがあります。
これは教訓。
取引明細書の直接持参
わかば銀行では、定期的に「取引明細書」を郵送して顧客に取引状況を報告するシステムができていました。
顧客は取引明細書を確認することで、自分の預金残高を知ることができます。
200万円預けた平林も取引明細書が送られてくれば預けたはずの200万円が載っていないことに気がつくはず。
これで不正は防止できます。
しかし、梅澤は支店で郵送するはずの取引明細書を直接顧客に届けると上司に申し出て持ち出してしまいます。
これを自宅に持ち帰り、ガスコンロで焼却。
取引明細は事務センターで印刷され、そのまま郵送されなくては意味がありません。
外訪担当者が持参するとした場合、
- 取引明細書を偽造する
- そもそも取引明細書を持参しない
ということで簡単に不正の発覚を免れることができます。
扱う人と確認する人を分離するというのは、不正防止の基本です。
不正の見逃し
古参銀行員の隅より子は、梅澤の書損を利用した200万円の不正に気づき、次長に報告をします。
次長が梅澤を会議室に呼び出して不正を追及するところまでは良かったのですが、
- 女子行員との不倫をばらす
- 伝票を利用した営業成績の水増しも口外する
- 顧客も気がついていない
- 200万円は来月返す
といわれ、不正を揉み消します。
業務上横領の被害金が多額になるのは、不正が1つではないこと。
100万円の横領も10回やれば1,000万円。
200万円の不正がすべてであるはずがありません。
光太にお金を使い過ぎ、梅澤のクレジットカードは利用停止。
そのときに、サラ金に申し込もうとする金額は3,000万円。
不正発覚後銀行に押収された犯行メモの分量、不正作成した定期預金証書の厚さからみると、不正は数千万円に上っていたはずです。
本日のまとめ
映画のストーリーは、もちろんフィクションです。
しかし、実際の不正に通じる話もあります。
- 不正防止の視点から事務手続きを定める
- 定められた事務手続きどおりに運用を行う
- 不正が発覚するプロセスを業務に組み込む
- 第三者がチェックをする
というのが基本です。
現実の世界にも通用する話です。
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「紙の月」の原作はこちら。角田光代さんの作品です。私も読みました。 https://amzn.to/4fzkdHf