金種表が不正防止に役立つもう一つの話

以前、不正防止のために金種表が効果的だと書きました。

現金横領の被害にあう多くの会社では、現金管理が適切に行われていません。

  • 帳簿の現金残高と、実際の現金残高が不一致
  • 帳簿の現金残高がマイナス

といったことが珍しくありません。

前回は不正防止を中心に金種表の役割を書きましたが、金種表には不正隠ぺいを防止する効果もあります。

金種表とは

金種表とは、現金を金種、すなわち、

  • 1万円札
  • 5000円札
  • 2000円札
  • 1000円札
  • 500円硬貨
  • 以下同様

といった金種ごとに枚数を確認し、これを一覧にした表のことです。

この金種表を毎日作成することで、不正が多い現金残高を日々確認することができます。

監査時に現金を合わせる手口

このように金種表を毎日作成することは、不正防止に必要な業務といえます。
また、監査前に現金を持ち込み、現金残高を一致させてしまうという不正の隠ぺいを防ぐことが可能となります。

例えば、帳簿に現金100万円と書いてあるのに、実際には横領して1万円しかない場合、差額の99万円を持ち込み、帳簿残高に現金を合わせてしまうことが可能となります。

預金と違い、現金の移動には痕跡が残りません。
そこで、このような隠ぺい工作ができてしまうのです。

監査時に帳簿残高と現金残高が一致しているので、監査で不正が発覚することはありません。

過去の事件をみると、持ち込む現金が用意できなかったのか、

  • 2009年5月には、長野県の信用金庫でコピー用紙を札束に見せかけたものの、見破られて不正発覚
  • 2018年6月にも、千葉県のJAでコピー用紙やメモ用紙を札束に見せかけたが、同様に発覚

という事件が起こっています。

これは、コピー用紙だから発覚していますが、実際に現金を持ち込まれたら不正の発覚はしなかったはずです。

横領をしていながら、一時的に資金を借りて監査を乗り切ることも可能です。
消費者金融からだとしても、数日間のことなので利息もほとんどかかりません。

本日のまとめ

金種表を作成するのは、1日数分。
それほど手間はかかりません。

現金管理の点からも、不正防止の点からもメリットは大きいと感じています。
現金の出し入れがあった日も、なかった日も必ず作成する。
こういう小さな積み重ねが大切だと感じます。