社内不正。
従業員不正と言い換えてもいいかもしれません。
実感としては「かなり多い」と思っています。
実際、年間どのくらい発生しているのでしょうか。
犯罪統計で見る不正件数
社内不正は、罪名でくくることができます。
不正は、犯罪に該当することがほとんどです。
社内不正を罪名でいえば、業務上横領、詐欺、背任、窃盗となるかと思います。
典型的には、このような感じでしょうか。
罪名 | 主な手口 |
---|---|
業務上横領 | 経理担当者が資金を着服 |
詐欺 | 領収書の改ざん、カラ出張 |
背任 | 取引先からのキックバック、法人カードの私的利用 |
窃盗 | 職場から金品を窃取 |
社内不正については、警察に被害届、告訴状の提出を行うことがあります。
警察などの捜査機関が、被害届や告訴・告発などを受けて犯罪として把握した数が、認知件数。
この数が犯罪統計として公表されています。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/statistics.html
ただ、先ほどあげた社内不正に関係しそうな罪名のうち、詐欺については特殊詐欺が多くて社内犯罪の件数だけを抜き出すことはできません。
また、窃盗については「侵入盗」「乗り物盗」「非侵入盗」に区別されているだけです。
また、背任は年間100件くらいの認知件数しかなく、社内不正全体の件数を推計するのはムリがあります。
ただ、知能犯に分類される横領については、ほとんどが組織内での業務上横領のはず。
これは社内不正の件数として使えるかと思います。
しかし、この業務上横領の件数。
令和5年の犯罪統計でも1,916件。
実感としては、かなり少ないと思います。
こんなに少ないわけはありません。
発生件数との差
認知件数とは、先ほど書いたとおり、警察における事件数。
そもそも警察に被害申告がされなければ、カウントされません。
現実には、
- 被害金額が少額で弁済も受けたので届出しない
- 会社の評判にも関係してくるので、表沙汰にしたくない
- 現金の横領などで証拠がない
といったことで認知されないことが多数あります。
実数に関する民間調査
では、他のデータはどうでしょうか。
民間での調査結果です。
調査名 | 調査機関 | 公表時期 | 結果 |
---|---|---|---|
企業不正に対する対応の実態調査 | 一般社団法人日本CFO協会 | 2017年11月 | 「これまでに組織内での不正を⾒聞きしたことがある」73% |
Japan Fraud Survey 2018-2020 | デロイトトーマツ | 2018年10月 | 「過去3 年間で不正事例あり」46.5% |
日本企業の不正に関する実態調査 | KPMG | 2022年9月 | 「直近3年間で不正が発生した」と回答した上場企業の割合24% |
調査対象、時期、規模によって結果は異なっています。
また「不正」の範囲にも幅があるかと思います。
「不正」の中には、経営者による不正、ハラスメントなどの非違行為、品質不正、産地偽装なども含まれている可能性はあります。
ただ、いずれも低い数字ではありません。
内部統制が浸透している上場企業でもこれだけ高い割合で不正が発生しているというのは、少し驚きです。
書籍から
多額資金を横領された体験を書いた「5億円横領された社長のぶっちゃけ話 」
https://amzn.to/3NQAsUf
横領の被害を受けている経営者はたくさんいる。私が被害についてテレビで話したときも、四人もの知人から「実はウチも(横領を)やられています」という連絡をもらった。知人たちは私のような「やぶへび」になることを恐れて、泣き寝入りするしかなかったと明かしてくれた。
この社長さん5億円横領され、その金の一部で従業員は「ミッキーハウス」を新築。
経理という仕事を軽んじたせいで横領のきっかけをつくってしまったことは私の不徳のいたすところであるが、これらをすべて公表することで中小企業の経営者など多くの方の参考にしていただきたいと思う。
と結ばれています。
本日のまとめ
社内不正の件数は、犯罪統計よりも多く、民間調査よりも少ないということは言えそうです。
横領被害に遭われた社長さんの交友範囲はわかりませんが、4人の方も不正被害があったとのこと。
表面化するのは、氷山の一角と言えそうです。