3000万円もの大金を持ち逃げされれば告訴状か被害届を出すのが当然です。
告訴ができない
松本清張の「告訴せず」。
3000万円を横領されたにも関わらず、被害者は警察に相談することができません。
それを見越しての犯行です。
持ち逃げされた3000万円は、衆議院選挙の買収資金として大臣に頼み込んで調達した金。
岡山から東京に出向いた政治家の義弟である木谷省吾が資金を受け取り逃走します。
拐帯横領、つまり持ち逃げです。
警察に相談すれば「何の金ですか?」と聞かれるのは当然のこと。
まさか違法買収の金を持ち逃げされたとも言えず、どうすることもできません。
それにしても現在問題となっている政治資金規正法。
昭和の時代から杜撰さが指摘されていたことがわかります。
このような社会問題を小説に盛り込むのが松本清張らしさです。
小豆相場に参戦
持ち逃げした木谷はこの資金を元手に小豆相場に参戦。
群馬県の神社で行われている太占(ふとまに)では、今年は小豆が大凶作。
太占とは、鹿の肩甲骨を焼いて、ヒビの割れ方で吉凶を占うというもの。
小説では比礼神社となっていますが、現在、群馬で太占を行っているのは貫前神社です。
冒頭の画像になります。
木谷は占いを信じ、資金を小豆相場に投入。
目論見どおりに大当たりし、そこで大金を手にしますが…
最後に大どんでん返し。
もうひとつの告訴せずが生まれます。
この小説、
- 選挙で金を配って票を買うという社会構造
- 古代の太占と現代社会の対比
- お金への執着心
など清張ワールド満載の内容となっています。
またビデオでも楽しめます。
本日のまとめ
ところで告訴は、しなくてはならないものではありません。
小説のように、告訴をしないということもできます。
- 表沙汰にしたくない
- 手続が面倒
- お金が戻って来るわけではない
という理由で告訴をしなこともあります。
ただ、近年はコンプライアンス意識の高まりで、刑事責任の追及をすることが多くなっている気はします。
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