今日2025年10月1日に公正証書作成手数料が改正されました。
少額部分で一部引き下げとなりますが、多くのケースでは値上げです。
一方、公正証書と比較検討されやすい法務局による遺言書保管制度は3,900円。
公正証書遺言の手数料上昇により、保管預り制度にメリットを感じそうです。
それでも公正証書遺言の作成をお勧めしています。
「遺言書保管制度」とは
公正証書遺言と比較検討されることの多い「遺言書保管制度」とは、令和2年7月から始まった比較的新しい制度です。
自筆証書遺言を法務局で管理・保管してくれます。
概要については、法務局のHPの説明がわかりやすいと思います。
- あなたの遺言書は、法務局において適正に管理・保管されます!
- 相続開始後、家庭裁判所における検認が不要です!
- 相続開始後、相続人等の方々は、法務局において遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付が受けられます!
- 通知が届きます!
とメリットが列挙されています。
さらに保管申請手数料は3,900円。
金額的にも利用しやすくなっています。
「公正証書遺言」を勧める理由
確かに遺言書保管制度は便利で手数料も安く、魅力に感じます。
また、遺言を自宅で保管する場合に比べ、
- 自宅のどこに保管するか
- 発見されないリスク
- 検認が必要
- 改ざんなどのおそれ
- 形式のチェックが受けられない
といったことはなくなります。
しかし、基本は自筆証書遺言です。
参考書や文例を見ながら自筆で書いた場合、内容の不備が生じやすくなります。
また、本人の自発的意思で書かれたかどうかが問題になることもあります。
遺言書の作成目的は、財産を確実に引き継ぎ、相続を円滑に行う点にあるはずです。
確実性の低い遺言書となるリスクがあります。
一方、公正証書遺言は、公証人という公務員が作成する文書であり、方式不備による無効リスクはほぼありません。
また、証人もいることから後日の紛争防止に役立つというメリットがあります。
現場で感じる公正証書のメリット
公正証書遺言の最大のメリットは上に書いたその確実性にあります。
遺言書の有効性を巡る紛争防止にも役立ちます。
それ以外にも公正証書遺言書作成に関与している立場から、次のようなメリットも感じます。
- 遺言の内容を伝えれば、文案は公証人が作成してくれる(文案の修正は可)
- 行政書士などが関与すれば、公証役場に行くのは作成時の1回だけ
- 遺言者がする作業は、記名と押印のみ
- 遺言書の正本、謄本が交付される
高齢の方にとって、自筆で長文を書くということに負担を感じる方も多くいます。
老眼などで文字が書きにくかったり、病気や怪我で文字が書けないこともあります。
そういう方にとっても、公正証書遺言という制度は便利に感じます。
本日のまとめ
9月下旬に、作成に関与した公正証書遺言の完成に立ち会ってきたところです。
偶然ですが、値上げ前に完了することができました。
今日2025年10月1日から生活に密接に関係する光熱費、飲料など多くの物が値上がりするようです。
その中で、公正証書手数料も上がったことになります。
値上げが公正証書遺言作成にプラスに働くことはありません。
それでも、作成が簡単で、遺言の安全性、確実性が担保される公正証書遺言には大きなメリットがあると感じています。