貸金庫事件からみる不正の防止策

三菱UFJ銀行の行員が貸金庫から十数億円相当を盗んだとされる事件は、大きな反響を呼んでいます。

昨日は財務「捜査」の視点からブログを書きました。

今回は、不正「防止」についてです。

現在判明している手口

現在までの報道を総合すると、元行員は次のような手口で貸金庫から金品を窃取したようです。

  • 貸金庫には、顧客の鍵と「銀行鍵」があり、2つ揃わないと金庫は開かない
  • 「銀行鍵」には予備鍵がある
  • 予備鍵は利用者の印鑑で割印を押し、封印
  • 予備鍵の管理は支店内で別管理
  • 元行員は、予備鍵を使って開扉

また、チェック体制については、

  • 子会社が貸金庫を定期的にチェックをしていたが、見抜けなかった

ということです。

ルールが作られ、チェック体制も構築されていましたが、チェックに漏れ、限界があったようです。
ただ、一番の原因は、元行員にスペアキーを使える機会があったということになります。

防止策

「不正のトライアングル」は有効なのか

さて、不正防止といえばアメリカの犯罪学者ドナルド・クレッシーが提唱したとされる「不正のトライアングル」理論が有名です。

不正の要因を分解すると、「動機」「正当化」「機会」の3つがあり、これが重なると不正が発生するというものです。

一見、もっともなように思いますが、

  • 動機 → 要はお金であり、誰でも動機を持ちうる
  • 正当化 → つまりは、「言い訳」であり、後付け

と感じます。
また、この2つは内心であり、外から知ることはできません。

銀行員は、世間よりも高い収入を得ているはずですし、少なくとも生活に困るレベルではありません。
頭取も会見の中で動機はわからないと述べています。
「動機をなくす」ということだけをとっても、現実的に難しいように感じます。

唯一の防止策

不正を防止するには、不正のトライアングルの一つ「機会」をなくすことだけだと思っています。

不正は、1人の人が権限を使えることで発生します。

今回のケースであれば、予備鍵が支店で管理されており、これを元行員が使える状況にあったことに尽きます。
銀行では今後、予備鍵を本部で集中管理するとのことですが、このように物理的に分離してアクセスできないようにするのが効果的です。

あわせて、

  • ルールを作る → 今回の事例では貸金庫管理規定
  • チェックをする → ルールが順守されているかの第三者チェック

を組み合わせるということで実効性を高めることにつながります。
今回はチェック体制はあったようなので、見抜けなかったことの検証は必須です。

本日のまとめ

貸金庫事件は、金額の多さ、また、銀行の安全、信頼に関わる事件として注目を集めています。
不正防止の点からも、学びの多い事件です。