「激務で低賃金」は正当化なのか、言い訳なのか

報道によれば、銀行詐欺罪に問われているアメリカ大リーグ選手の元通訳が裁判所に提出した申立書において「激務で低賃金だった」と主張しているとのことです。

不正のトライアングル理論では、「動機」「機会」「正当化」の3要素があり、これら3つが重なると不正が起きると言われています。

不正のトライアングルとは

不正のトライアングルについては、このブログでも何度か取り上げたことがあります。
アメリカの犯罪学者ドナルド・クレッシーが唱えた、不正を語るうえで必ず出てくる理論です。

「動機」「機会」「正当化」

この3点が揃うと不正が起こるとされています。

元通訳の主張

報道によると今回の事件について元通訳は、事件の背景として

  • 激務で低賃金だった

と申し立てているとのことです。

実際にそのとおりだったかはわかりませんが、このような抗弁がされています。

この発言は、動機とみることもできますが、正当化に近い感じを受けます。
正当化とは、自分は悪いことをしたが、それには理由があるというものです。

では、正当化と言っていいのか。
正当化であれば、不正をしたときにその気持ちを抱いていたことになります。

発言の検討

内心の問題であるため、

  • 犯行時に「自分は悪くない」と思っていたのか
  • 犯行が発覚したので「自分は悪くない」と言い訳

なのか区別がつきません。

「正当化」とは、本来、不正を犯す際に本人が抱いているもの です。
一方で、逮捕後に語られる「言い訳」は、本来の正当化ではなく、自己弁護のための後付けと考えられます。

「自分は低賃金で働かされていた」という考え方は、不正行為を正当化するために犯行当時に抱いていたのかもしれません。
しかし、他の報道によるとギャンブルの負債が主要な要因だったとも言われてもいます。

それであれば、後付けの正当化に近いものがあると感じます。

実際のところ、この種の抗弁は必ずと言っていいほど出るものです。
今回のケースの場合、どちらかは分かりませんが、いずれにしても正当化をなくすことで不正を防ぐことは難しいように思います。

本日のまとめ

不正のトライアングル理論は、不正が発生した後の分析には有用だと思います。
しかし、不正の防止となると、これではやや難しいと感じます。

不正を防止できるのは、機会をなくすことに尽きると思っています。