前回、減価償却費の計算方法として、個人事業の原則法である定額法を紹介しました。
法人では、定額法のほか、一部の固定資産では定率法が法定償却方法となっています。
法定償却方法
減価償却費の計算方法には、
- 定額法
- 定率法
- 生産高比例法
など、何種類かあります。
法人税法では、
- 建物、建物附属設備、構築物等 … 定額法
- 機械装置、車両運搬具、器具備品 … 定率法または定率法
により償却することになっています。
償却方法の選択が認められている場合には、その中から償却方法を届け出ることができます。
届出がされない場合には、機械装置、車両運搬具、器具備品等については、法定償却方法として定率法が適用されます。
実務的には法定償却方法に従っていることが多いように見受けます。
定率法の計算方法
定率法の減価償却費の計算式は、次のようになります。
減価償却費 = 未償却残高 × 耐用年数に応じた償却率 × 事業供用月数/12
定額法と異なるのは、「未償却残高」に償却率を掛けるという点です。
未償却残高とは、文字どおり「まだ償却されていない残高」という意味になります。
例えば、自動車を300万円で購入した場合でいえば、
- 購入時点 … 減価償却をしていないので、未償却残高は300万円
- 1年目に減価償却費を80万円計上した場合 … 300万円から80万円を引いた220万円が未償却残高
- 2年目減価償却費を50万円計上した場合 … 1年目の未償却残高220万円から50万円を引いた170万円が未償却残高
となります。
つまり、取得価額から過去に計上した減価償却費の合計額(減価償却累計額)を引いた金額が、未償却残高です。
未償却残高のことを、残存価額、簿価ともいうこともあります。
具体的な計算方法
300万円で購入した自動車の減価償却の計算は、定率法では次のように行います。
耐用年数を調べる
まず、自動車の耐用年数を耐用年数表から探します。
今回の場合は、6年です。
主な資産の耐用年数表 → 国税庁HP
償却率を調べる
次に耐用年数に応じた償却率を確認します。
償却率表 → 国税庁HP
償却率は0.333であることがわかります。
計算する
ここまで求められたら、具体的に計算します。
- 1年目 3,000,000円×0.333=999,000円
- 2年目 (3,000,000-999,000)円×0.333=666,333円
- 3年目 (3,000,000-999,000ー666,333)円×0.333=444,445円
定率法では、未償却残高に償却率をかけていくので、減価償却費は年々減少していきます。
毎年同額の減価償却費が計算される定額法との大きな違いです。
延々と続く償却計算の変更
ところで、このように計算していくといつまで経っても減価償却費の計算が終わりません。
乗用車の耐用年数は6年なのに、減価償却費の計算は15年以降も続いてしまいます。
そこで、定率法については、「償却保証額」を設け、その年の減価償却費が償却保証額を下回る場合には、減価償却費の計算方法を変更することにしています。
先ほど償却率を調べた右隣、赤枠の部分がこれから使う「改定償却率」、「保証率」になります。
償却保証額
まず、償却保証額を求めます。
償却保証額 = 取得価額 × 耐用年数に応じた保証率
取得価額が300万円の資産の償却保証額は、
3,000,000円×0.09911=297,330円
です。
先ほどの例では、4年目の減価償却費が296,444円となり償却保証額を下回っています。
この場合、4年目以降は次のように減価償却費を計算します。
償却保証額を下回った場合の償却方法
その年度分として計算される減価償却費の額が償却保証額未満となった場合、期首の帳簿価額に改定償却率を掛けて減価償却費を計算します。
4年目の期首簿価(未償却残高)は上のエクセルで確認すると890,222円です。
4年目以降は、890,222円に対し、耐用年数6年の改定償却率である0.334を掛けて減価償却費を計算します。
4年目 890,222円 × 0.334 =297,335円
5年目 890,222円 × 0.334 =297,335円
6年目 890,222円 × 0.334 =297,335円 → 295,551円
6年目が297,335円とならないのは、これを計上した場合、帳簿価額がマイナスとなってしまうためです。
6年目期首の未償却残高は、295,552円です。
帳簿価額をマイナスにはできません。
また、資産が残っている以上、ゼロとするわけにもいきません。
そのため、帳簿価額1円を残し、残額を減価償却費として計上します。
これで定率法により6年間で減価償却を終わらせることができました。
本日のまとめ
定率法の計算方法を紹介しました。
実際には申告ソフトを使用して計算することがほとんどかもしれません。
それでも、計算方法を知っておくことは必要なことです。