ときどき、財務捜査官について話を書いていきます。
私自身「財務捜査官は何をしているのですか?」「財務捜査官は何人いるのですか?」とよく聞かれます。
そのような質問への回答です。
公的資料からの確認
財務捜査官が現在何人いるのかは、退職した現在、明確に何人ということはできません。
職務上知り得た秘密に該当しては問題です。
しかし、過去に出された資料などから、おおよその人数は推定できます。
まず、私が採用された平成11年当時の人数です。
(平成)12年1月現在、17都道府県警察において合計43人が財務捜査官として勤務しており、金融・不良債権関連事犯、企業犯罪等の捜査過程で、企業等から押収した証拠品の精査や財務解析等に多大な貢献をしている。
平成12年警察白書
平成12年1月現在の人数43人には、私もカウントされているはずです。
43人というと各都道府県に1名ずつというイメージですが、17都道府県警察とあるので、主要な都道府県警察にしか財務捜査官はいないようです。
一方現在の人数については、
令和元年に大阪府警が20年ぶりに財務捜査官を採用したという新聞記事の中で、財務捜査官の人数について、
財務捜査官は決算書や帳簿などの財務資料を読み込んで分析し、不正などを見抜く専門捜査官。警察庁によると、民間出身者を新たに採用するだけではなく、捜査員が試験を経て専門捜査官になるケースもある。現在、府警や警視庁など14都道府県警察で48人が働いているという。
2019.9.5 SankeiBiz(サンケイビズ)
とあります。
また、令和5年に福岡県警が財務捜査官を募集する際に、
実は、財務捜査官は全国に50名ほどしかいません。財務捜査官がいない県警も多く、九州勤務の財務捜査官は、福岡県警察の4名だけ。そのため、他のエリアで大きな事件があった際に、希望制で応援に行くこともできます。組織から重宝される存在です。
ニフティ転職
と求人情報に記載があります。
これらの資料から、財務捜査官の現在の人数は50人程度。
平成12年からあまり変動がないとみて良さそうです。
全国警察の中での割合
全国警察の警察官の人数は何人いるかといえば、令和5年4月1日現在259,171人。
私が住んでいる草加市の人口よりも多い人数です。
全国津々浦々に1,149の警察署が置かれ、また交番、駐在所もあります。
また、部門としても地域警察、生活安全、刑事など多岐にわたるため、全国で26万人という人数となるのでしょう。
財務捜査官の50人というのは、警察組織の中でごくごく少数。
割合として、0.1パーセントにも満たないマイナーな存在であることは間違いありません。
他の機関との比較
捜査、調査をしているのは警察だけではありません。
証券市場を監視する「市場の番人」たる証券取引等監視委員会にも財務捜査官同様に公認会計士は在籍しています。
証券取引等監視委員会の「来たれ、市場の番人」と題した採用案内では、
平成28年度末の証券取引等監視委員会に在籍する公認会計士は21名であり、市場分析審査課に2名、開示検査課に10名、証券検査課に3名、特別調査課に6名が配属されています。当委員会における公認会計士の必要性は高まっており、10年前に比べ、在籍人数は2倍に増加しています。
とあります。
証券取引等監視委員会の職員数は、約700人。
その中の21名が公認会計士というわけですから、会計専門家の割合としては、警察よりもずっと多いことになります。
また、10年前よりも人数が倍増しているということですから、それだけ必要性が増しているのだろうと思われます。
一方、捜査、調査機関ではありませんが、金融機関にも会計専門家は多くいるようです。
三菱UFJファイナンシャル・グループが発行している「統合報告書・ディスクロージャー誌 2023年版」には、
MUFGには高度な専門資格を保有する社員が多数在籍しており、専門性の高い資格取得に対する支援制度も整備しています。
として、公認会計士45人、税理士36人が在籍しているとあります。
ちなみに、司法試験38人、不動産鑑定士200人とも書いてあります。
社員数12万人の巨大金融グループとはいえ、MUFGの専門家率は群を抜いています。
本日のまとめ
全国警察の中で財務捜査官は50人程度。しかも今から25年前とほぼ人数は変わっていません。
以前と比べ、多くの事件はお金絡み。
また、経済不正事件は年々複雑になり、高度な専門性を要求されるケースが増えてきているように感じます。
国民の安全、安心のためにも、警察の財務捜査官の人数がもう少し増えるといいかなと感じています。