最近、相続のご相談で増えてきたと感じるのは、任意後見。
そのものズバリで尋ねられることもあれば、遺言書の流れで法定後見との比較でご紹介することもあります。
任意後見制度の特徴
任意後見制度については、このところメディアで取り上げられる機会が多いようです。
日本経済新聞を検索しても、かなりの件数がヒットします。
最近の記事では、「認知症、契約で備え 家族信託・任意後見を併用も」が内容的にまとまっています。
後見制度というと、まずは、法定後見制度が思い浮かびます。
法定後見には「補助」「補佐」「後見」の類型があり、その中でも最も利用が多いのが判断能力が著しく不十分な場合に用いられる「後見」です。
後見は、本人の財産を保護管理する点では優れていますが、内容が法律で定められているため柔軟性に欠ける点があります。
また、後見人は家庭裁判所が選任し、誰が就任するかはわかりません。
後見人への報酬が継続的に発生するという点もデメリットといわれます。
そもそもの話としては、法定後見は判断能力が不十分になった後に申立てを行うので、事前に備えるということは想定されていません。
これに対して任意後見制度は、判断能力が十分あるうちに、判断能力の低下に備えて行う契約による後見です。
任意後見では本人が選んだ後見人が後見業務を行い、その内容も自由に契約で決めることが可能となっています。
任意後見契約は公正証書で作成する必要があり、実際に判断能力が低下した際には家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てることで効力が発生します。
年齢が高くなると意思能力はあっても、銀行や証券会社に出向くのが難しくなってくることもあります。
それに備えて、任意後見契約に財産管理等委任契約をセットにすれば、判断能力がしっかりしたうちから財産管理を信頼できる家族などに託すことが可能となります。
法定後見の硬直性を避け、判断能力があるうちに自分の財産を自分の意思で任せたいというニーズに合っているのだと思います。
本日のまとめ(補足)
任意後見と並び時おり相談をいただくのが、家族信託。
こちらも柔軟な制度設計が可能です。
ただし、家族信託については、税制面にも気を付ける必要があります。
この点については、制度設計時に十分説明を受けていただきたいと思います。
任意後見、家族信託については、判断能力があるうちにしか契約できません。
法定後見も含めメリット・デメリットを比較検討されることをお勧めしています。