嘘つきは目をそらすのか


目は心の窓。
相手の目を見て話せないのは、嘘をついている証拠とよく言われます。

確かに、嘘をつくときには、相手の目を見ることができないような気がします。
このような「嘘発見法」に対してはそう思うこともありますが、個人差ではないかと感じることもあります。

個人的な体験と、本の内容からです。

個人的な体験

私自身、何も嘘をついていないのに、目を逸らすことに気がついたことがあります。

かつて面接試験を受けながら、聞かれた質問に対して考えながら話をしているうちに、ふと、面接官から目を逸らしていることに気がついたことがあります。
視線を逸らすのは嘘の証拠といいますが、そのときは昔のエピソードを思い出しながら話をしている途中。

嘘をついてはいません。
ただ、面接の場で「嘘をついたと思われたかもしれない」という気持ちになり、少し気持ちが動揺したことを覚えています。

それ以来、視線を逸らしても、嘘をついているとはいえないのではと感じています。

「戯言に過ぎない」

そんな個人的な感想では意味がありません。
「トーキング・トゥ・ストレンジャーズ 「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと」 https://amzn.to/48zREag
にも、視線を逸らすことと嘘とは関係がないと書かれています。

この本の書き出しは、ニューヨークのホテルに泊まった筆者の父親のエピソード。
今日はロビーで見知らぬ人とガーデニングの話に興じて楽しかった、と筆者に一日の出来事を話します。
一緒に会話をしたのは、周囲も目にとめるほどの有名人。
でも誰だか知らないし、有名人かどうかにも興味がない感じ。

ここから始まる本なので最初は「見知らぬ人にも物怖じせずに話すコツ」かと思っていましたが、そうではありません。

他人をどう判断すればいいのか。
なぜ人は騙されやすく、人を見抜くのが難しいのか。
具体的に根拠をもって書かれています。

嘘と視線の関係についても、触れています。

数年前、世界じゅうの五八カ国に住む数千人を対象に「欺き行為」への態度についての調査が行なわれた。「噓つきを見抜くためにいちばん頼りにする手がかりは?」という問いに、六三パーセントの回答者が「視線を逸らすこと」だと答えた。私たちの多くは、現実世界の噓つきも『フレンズ』の世界の噓つきと同じように振る舞い、そわそわした落ち着きのない視線をとおして内なる感情を外に伝えると考えているのだ。 控えめにいっても、これは戯言でしかない。噓つきは眼を逸らしたりしない。

世界中58カ国に住む数千人のアンケートでも「嘘つきは視線を逸らす」と考えています。
しかし、筆者は「戯言」と断言しています。
その理由は、この後に続けて書かれています。

元FBI捜査官も

以前FBI研修に行ったところ、取調べに心理学的要素を取り入れていると説明を受けたことがあります。

研修の後に読んだのが
「What Every BODY is Saying: An Ex-FBI Agent’s Guide to Speed-Reading People」https://amzn.to/3ClupEF 。

筆者は25年間勤務した元FBI捜査官のジョー・ナヴァロ。
このように書いています。

Keep in mind that predators and habitual liars actually engage in greater eye contact than most individuals, and will lock eyes with you. Research clearly shows that Machiavellian people (for example, psychopaths, con men, and habitual liars) will actually increase eye contact during deception (Ekman, 1991, 141–142). Perhaps this increase in eye contact is consciously employed by such individuals because it is so commonly (but erroneously) believed that looking someone straight in the eye is a sign of truthfulness.

本物の嘘つきこそ普通の人よりも視線を合わせる。
著名な心理学者エクマンの研究でも示されているようです。
「嘘つきは目を逸らす」ということを逆手にとって、嘘つきこそ目をそらさない。
たしかに、そうかもしれません。

この本については、こちらが日本語訳かと思います。
FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 https://amzn.to/3UEAySP

また、ジョー・ナヴァロのしぐさを読み解く方法については、日本語字幕付きでYouTubeにもあがっています。
手早くエッセンスを知るのなら、こちらもおすすめです。
https://youtu.be/Wo5djWo3xGY?si=OculRws7ebhWhcm-

本日のまとめ

確かに嘘つきは視線を逸らすことがあるかもしれません。
でも、嘘つきは必ず視線を逸らすわけでもありません。
視線を逸らしたからといって嘘であるとも言えません。

嘘というには事実と違うことを言っているかどうかで測るしかありません。
でも、その「事実」がわからないから嘘かどうかの見分けがつかないわけです。
ここら辺は堂々巡りになってしまいます。

また、仮に事実と違っている発言であっても、記憶違い、勘違いの可能性もあります。
すぐに嘘と決めつけるのも行き過ぎかもしれません。

嘘と即断しないように気をつけないとなりません。