捜査機関には、告訴の受理義務があります。
告訴状を作成し、警察に受理を求めることは当然のことです。
告訴が受理されないときの対応法について考えてみます。
告訴の受理に関する根拠規定
捜査機関における告訴の受理義務について、犯罪捜査規範には次のように定められています。
(告訴、告発および自首の受理)
第63条 司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。
また、警察庁も「告訴・告発の受理体制及び指導・管理の強化について」と題する通達を各都道府県警察に向けて発出しています。
https://www.npa.go.jp/laws/notification/keiji/keiki/009.pdf
ここから、警察には告訴を受理する義務があることがわかります。
しかし「告訴状」と書かれたすべての文書が受理されるわけではありません。
- 親告罪の告訴期間を経過している
- 時効が完成している
といった場合には受理されませんし、
- 告訴事実が不明確
- 犯罪に該当しない
- 犯人に対する処罰意思が示されていない
といった場合も、告訴の要件を満たしていないため、告訴は受理されないことになります。
「受理されない」とは
ところで「告訴状が受理されない」といった場合、
- 正式に「不受理」となった
- 警察から「告訴状を預かったうえ検討する」と言われた
の2つがあるかと思います。
正式に「不受理」となった場合には、その理由を確認することになります。
なぜ受理できないのか、納得いく説明を求めなくてはなりません。
一方「告訴状を預かります」というケースもあります。
この場合も告訴は正式に受理されていません。
詐欺、業務上横領などの事案については、告訴内容が複雑であったり、帳簿内容を確認しないと事件性が判断できないこともあります。
告訴状の添付資料も相当な分量にのぼることがあります。
告訴状が持参されても、警察がその場ですべての書類に目を通し、受理の判断まで行うというのは現実問題として無理かと思います。
告訴状の預かりとなった場合、ある程度の期間を決めて、後日回答をもらうというのが一般的です。
また逆に、告訴状を提出する前に警察に事件相談を行い、その上で告訴状の受理を行ってもらうという方法もあります。
告訴状案と手元にある資料を持参し、捜査上の問題点、追加資料の必要性など相互に話を進めていくことになります。
どちらも少し時間のかかる話です。
告訴状の預かりや、告訴状提出前の事件相談は有効な方法ではありますが、長期化しないように進行させる必要があります。
正式受理前にも捜査は可能
警察は告訴がなければ捜査ができないわけではありません。
犯罪があると思えば捜査を行うことは可能です(刑事訴訟法189条2項)。
防犯カメラ画像などは早期の証拠保全が必要となります。
告訴状が正式受理される前に捜査を進めてもらい、その結果を踏まえて検討することも可能です。
本日のまとめ
告訴要件を満たした告訴状が警察に受理されることは当然のことです。
ときには「預かり」「事前相談」をうまく使いながら、的確な告訴状を作成し、早期受理を求めることになります。