「坊ちゃん刈り」をオーダーされたら

私が現在通っている床屋さんには、かれこれ50年以上お世話になっています。
物心がついた頃から還暦を過ぎた現在まで。
長いお付き合いになっています。

とはいえ、一時的に、引っ越しや他県警への派遣などで別のお店を利用したこともあります。
その中で感じたのが、お客さんからのオーダー対応には違いがあるということです。

「オーダーどおりにカットします」というお店

初めて利用する床屋さんでは、軽く髪型を伝えることになります。
一とおり説明をしたあとに、「お客さんが、似合わない髪型をオーダーしたらどうするのか」という話になりました。

その店主は、「似合わないと思っても、お客さんの希望ですから、そのとおりにカットしますよ」とのこと。

お客様の意思を最大限に尊重する。
一つの見識といえます。

「アドバイスします」というお店

別の床屋さんでも、同じような話題になったことがあります。

おじいちゃん、おばあちゃんが、小学校に入学する孫を連れて「坊ちゃん刈り」といわれた場合の対応の話でした。

「坊ちゃん刈り」と一言で言っても、いくつかのスタイルがあるようです。
とはいえ、祖父母世代でいう「坊ちゃん刈り」は、昭和風の古いスタイルです。
今では少数派かもしれません。

こちらの店の店主は、「そういうときは、別の髪型か、現代風にアレンジしたスタイルを提案します。それでも昭和風の髪型が希望であれば、そのとおりにカットします」とのこと。

これも一つの見識です。

遺言書作成にも通じる

この床屋でのやり取りを思い出したのは、遺言書の作成業務をしているときのことです。

遺言書については、ある程度お客さまの要望があります。

中には、すでに内容をご自身で固めている方もいます。
そのとおりに作成しても、法的には何の問題もありません。

一方で、税理士・行政書士の視点から見ると、「こうした方が、よりお客様のためになるのでは?」と感じることもあります。

坊ちゃん刈りと同じです。

  • お客様の要望どおり、そのまま作成を進める。
  • 専門家として別の選択肢や潜むリスクを提示し、その上でお客様に最終判断を委ねる。

どちらが絶対的に正しいということはありません。

私の場合&本日のまとめ

では、私自身はどうするのか。
私は、お客様に「提案する」ことにしています。

お客さまの要望どおりに公正証書遺言を作成しても、満足は得ていただけるはずです。

ただ、お客さまが決めた内容といっても、別の視点や、より良い選択肢の存在に気付いていない可能性があります。
また、こちらの提案をきっかけに対話がはじまり、お客さまの真意がわかることもあるはずです。

提案をすることで、お客さまが再考され、作成まで時間がかかってしまうかもしれません。
それでも、必要な提案を行い、最終的な判断をしていただきたいと思っています。