投稿と守秘義務と

立入お断り

私は今現在、このブログとX(Twitter)で書き込みをしています。
元警察官がブログなどをしていることに対し、守秘義務は大丈夫なのかとご懸念の向きもあろうかと思います。
その点は、十分注意しています。

公務員の守秘義務

公務員に守秘義務が課されていることは、改めていうまでもありません。
国家公務員法にも、地方公務員法にも守秘義務が明記されています。
また、仕事の性格からも秘密を守ることは当然のことです。

一般の方が、公務員、警察官から業務に必要な範囲で、個人のプライベートな内容、例えば、

  • 住所
  • 勤務先
  • 家族構成

などを聞かれた場合、多くの方はこれに答えてくれます。
その前提には、公務員は職務上知り得た内容を口外しないと信用しているからです。
公務員が仕事で知ったことを言ってしまっては、公務に対する信用性がなくなってしまいます。

ただ、実際、どこまでが秘密なのか、判断に迷うこともあるかもしれません。

このことについて、税務職員が外部の者に貸与した内部文書が職務上の秘密に該当するかが争われた「徴税虎の巻事件」があります。

判決で、「職務上知ることのできた秘密」の秘密とは、

  • 非公知の事項
  • 実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるもの
  • 形式的に秘密の指定をしただけでは足りない

と判断基準を示し、虎の巻は秘密にあたると判断されています。

このような判例を持ち出すまでもなく、部外に知られることで業務に支障がでるような事柄を外部に出すというのは問題かと思います。
公務員の守秘義務は、退職後も適用されます。

すでに広報されていても

裁判ではありませんが、フェイスブックへの投稿が問題とされたこともあります。

新聞記事からの引用です。

山梨県警警視が職務情報を投稿 「火事で2人死んでた」
インターネット交流サイト「フェイスブック」に、山梨県警幹部の警視(57)が「火事の現場では2人死んでました」などと職務上知った情報を投稿していたことが9日、県警監察課への取材で分かった。
(中略)
投稿は勤務時間外だった。火事の内容について、県警は「投稿時、既に警察として発表していた内容」としている。
フェイスブックは世界最大の会員制交流サイト。2006年に一般に開放され、08年に会員が1億人を突破、11年に8億人を超えた。〔共同〕

2012/2/9 日本経済新聞

新聞記事に、「フェイスブックは世界最大の~」と説明を加えているので、SNSが一般的でなかった頃の話かと思います。

事案の全体像はよく分かりませんが、既に警察として発表していた内容であっても問題とされることはあるようです。

すべてが秘密でもない

一方、捜査に関することすべてが秘密というわけではありません。

  • 刑事訴訟法、犯罪捜査規範に書かれていること
  • 一般にマスコミ報道されていること
  • 警察白書等の公的資料に記載されていること

については、秘密とはいえません。

例えば、警察官が犯罪捜査を行うに当たって守るべき事項を定めた犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)には、

(指掌紋の採取、照会等)
第131条 逮捕した被疑者については、引致後速やかに、指掌紋を採取し、写真その他鑑識資料を確実に作成するとともに、指掌紋照会並びに余罪及び指名手配の有無を照会しなければならない。

とあります。
また、供述調書の記載事項についても条文があります。
逮捕されたら鑑識資料を作成され、供述調書にはこういう内容が記載されるということは、規則として公表されていることになります。

また、ときおり秘密との関係が言われるNシステムについても

(6)自動車ナンバー自動読取システム
自動車盗をはじめとする多くの犯罪では、犯行や逃走に自動車が悪用されていることから、 被疑者の早期検挙を果たすためには、車両ナンバーに基づいて当該車両の発見・捕捉をすることが効果的である。このため、警察庁では、通過する自動車のナンバーを自動的に読み取り、手配車両のナンバーと照合する、自動車ナンバー自動読取システムの整備に努めている。

令和5年警察白書

と紹介されているので、自動車ナンバー自動読取システムの存在と活用事例もオープンにされていることになります。
もちろん、さらに詳細な内容などについては公表されていないため、秘密に該当するのかと思います。

本日のまとめ

もともと職務上知り得たことをブログに書くつもりはありません。
というよりも知っている秘密がほとんどないという事情もあります。
私が従事していたのは、財務捜査という限られた分野。
秘密に触れる機会がなかったというのが、正直なところです。