万引きに関する各国意識の違い

2024年10月4日付け日本経済新聞電子版に「ユニクロ万引き団、日本で暗躍 ベトナムで高値取引か」という記事が掲載されていました。

ユニクロ万引き団、日本で暗躍 ベトナムで高値取引か - 日本経済新聞
来日外国人グループによる万引き事件が後を絶たない。目立つのは、指示役が実行役に狙いやすい店舗などを指南して日本に送り込み、大量の商品を盗む手口。万引きで摘発された外国人は昨年、8年ぶりに増加した。専門家は「従業員研修など対策のレベルを上げる必要がある」と話す。「店員が少ないので監視の目をすり抜けて何度も万引きできた」。...

万引きの手口、組織的な万引き実態と合わせ、最後に「東京万引き防止官民合同会議」による調査結果が紹介されていました。
日本人及び日本に滞在経験のある外国人を対象に、万引きに対する各国の意識の違いが示されています。

「東京万引き防止官民合同会議」

「東京万引き防止官民合同会議」とは、万引きに関する総合的な対策を推進するため、警察、自治体、各業界団体、関係機関・団体等が相互に連携した機関として紹介されています。

東京万引き防止官民合同会議等の取組 警視庁

「万引き追放SUMMERキャンペーン」なども実施しているようです。

調査概要

東京万引き防止官民合同会議では、定期的に万引きに関する調査も実施しています。

今回取り上げるのは、その一つ、

となります。

調査対象としたのは、
① アメリカ、イギリス、フィリピン、ベトナム、韓国、中国
  過去5年以内に合計して7 日以上の東京都内滞在経験者
② 日本
 過去5年以内に海外渡航経験がある東京都在住者

で各国100人。

これだけのサンプルがあれば、統計資料として信頼性はありそうです。

調査結果

調査結果で興味深いのは、国による万引きに対する意識の差。
日本でも万引き被害は深刻ですが、他の国に比べると万引きが悪いことだという意識が強いことがわかります。

  • 「万引きをする」に対する意識 ~ 「いかなる理由があっても許されない」の回答
日本アメリカイギリスフィリピンベトナム韓国中国
85%44%48%74%53%76%70%
出典:万引きに関する調査研究報告書 ~外国人と日本人の意識に差に関する検討~
  • 「万引きは大なり小なり誰でもやっていることだ」 ~ 「そう思う」の回答
日本アメリカイギリスフィリピンベトナム韓国中国
2%36%26%7%22%8%5%
出典:万引きに関する調査研究報告書 ~外国人と日本人の意識に差に関する検討~

ただ、万引きに対する意識が低いことと、知識があることは別のようです。

  • 「日本では、万引きで逮捕されることもある」 ~ 「知っている」の回答
日本アメリカイギリスフィリピンベトナム韓国中国
67%50%46%77%88%50%38%
出典:万引きに関する調査研究報告書 ~外国人と日本人の意識に差に関する検討~

日本人以上に、ベトナム、フィリピンでは、万引きが犯罪であるという認識は強いようです。

一方、店舗への意識には、大きく違いがあります。

  • 「万引きをされるのは、店側に問題がある」~「そう思う」の回答
日本アメリカイギリスフィリピンベトナム韓国中国
1%36%26%41%22%5%5%
出典:万引きに関する調査研究報告書 ~外国人と日本人の意識に差に関する検討~
  • 「店外に陳列されている商品は、無料で配布されているように見える」 ~ 「そう思う」の回答
日本アメリカイギリスフィリピンベトナム韓国中国
2%22%17%8%11%2%5%
出典:万引きに関する調査研究報告書 ~外国人と日本人の意識に差に関する検討~

ここは、店のディスプレイに対する感じ方の違いです。
店の外に商品が陳列されている商品が、タダに見えるという発想はありませんでした。
どの品物にも値札は貼ってあると思うのですが。

本日のまとめ

調査結果から調査対象となった国との比較では、日本は万引きに厳しい意識をもっていることがわかります。

一方、万引きについて、それほど悪いことではないという国もあります。
店に問題があると考えることもあるようです。

来日外国人が多い現在、そのような意識を持つ人が増えてきており、店のソフト・ハード面での対応が必要なことがわかります。

もちろん、万引きだけが社会ルールではありません。
信号無視に関しては、日本は悪いことだと思わない割合が高い国です。

  • 「徒歩で信号無視をする」 ~ 「いかなる理由があっても許されない」の回答
日本アメリカイギリスフィリピンベトナム韓国中国
32%28%40%67%54%36%57%
出典:万引きに関する調査研究報告書 ~外国人と日本人の意識に差に関する検討~

社会の安心安全は万引きだけで測れるものではありません。
また、そのような意識を持っていることと、実際に犯罪をするかについても分けて考える必要はあります。

そのような意識をもちながらも、万引き、また、その他の不正対策について、再考する必要がありそうです。