相続税対策の一環として「生前にお墓を購入する」というアドバイスを聞くことがあります。
確かに相続税対策にはなりますが、慎重な判断も必要になります。
さまざまな相続税対策
相続税への対策として、法的にも制度的にも有効とされる方法はいくつか存在します。
例えば、
- 生命保険の活用
現金を生命保険に変えることで、相続人一人あたり500万円の非課税枠を活用する方法です。
一般の相続財産とは別扱いになり(相続税の計算上は相続財産に含まれます)、分割協議に含める必要もありません。 - 生前贈与
相続税は相続時に有する財産に対して課税されます。
そこで、生前に相続人に財産を贈与し、相続時の負担を減らそうという発想です。
などがあります。
こうした対策は、年齢やご家庭の状況に応じて柔軟に検討する価値があるといえます。
これと並んで生前にお墓を買うという方法も挙げられることがあります。
お墓の購入と相続税
お墓の購入が相続税対策とされるのは、お墓は相続税法上で非課税財産とされているためです。
相続税法第12条には非課税財産が列挙されており、その中に「墓所、霊びょう、祭具等」が書かれています。
現金は相続税の対象となりますが、その現金で生前にお墓を購入しておけば非課税となります。
その点で、確かに節税効果はあるといえます。
墓地購入を検討する際の留意点
ただし、以下の点には注意も必要です。
1. 相続税がそもそも発生するのか
「相続税対策」であれば、相続税が発生することが前提です。
遺産額が基礎控除内に収まる場合や、小規模宅地等の特例を活用することで相続税が発生しないご家庭も少なくありません。
その場合、節税策自体が無用になることもあります。
2. お墓に対する意識の変化
葬儀や供養の形は大きく変化しています。
家族葬や直葬の普及、納骨堂や樹木葬など、新たな選択肢が増えています。
従来の「家のお墓」を前提とした相続税対策が、有効かについては検討の余地があります。
3. お墓を持つことの負担
お寺の墓地では、年間の管理費に加えて、入檀料や法事・読経時のお布施など、継続的な金銭的負担が生じることもあります。
一方、公営墓地は費用が抑えられますが、生前購入が難しいケースもあります。
昨今、「墓じまい(墓の撤去と改葬)」を選ぶ方も増えてきています。
維持管理の問題や子ども世代への負担を懸念する声が背景にあるためです。
この点は、相続人の方の意見も大切になります。
本日のまとめ
お墓の購入は、節税という一面だけを見れば確かに効果が見込めます。
しかし、相続人がそのお墓をどう受け止めるか、将来にわたって維持できるのかという視点も欠かせません。
もちろん、お墓の生前購入が悪いわけではありません。
節税効果だけに目を向けず、ご家族やご自身の価値観を踏まえた“納得できる選択”こそが、真の相続対策だと思います。