銀行貸金庫不正の実態 ~ 三菱UFJ・みずほ・ハナ信用組合の事例から

三菱UFJ銀行で世間に大きな衝撃を与えた貸金庫事件の発覚後、みずほ銀行、ハナ信用組合でも貸金庫を巡る不正事件が発覚しました。

3金融機関の公表資料を分析してみました。

分析資料

分析対象とした資料は、次のプレスリリースです。

対比表

項目三菱UFJ銀行みずほ銀行ハナ信用組合
行為者営業課・46歳・女性渉外課・30代・女性次長・48歳・男性
逮捕日2025年1月14日逮捕有無記載なし2025年3月4日
逮捕容疑窃盗窃盗
懲戒解雇日2024年11月14日2019年10月2024年2月15日
不正敢行時期2020年4月~2024年9月2016年1月~2019年6月2017年4月~2023年3月
発生店舗練馬支店、玉川支店広尾支店横浜支店
発覚日2024年10月31日2019年8月2023年10月31日
被害額約14億円66百万円9億16百万円(逮捕容疑は6億19百万円)
被害者数約70名2名不明(多数)
手口支店保管の予備鍵を不正使用し貸金庫の現金・金を窃取。
被害者の申し出に対し偽装工作を行う。
支店保管の予備鍵を不正入手し貸金庫を開庫し現金を窃取。貸金庫借用箱の鍵を無断複製し、頻繁に貸金庫に出入りして現金を複数回窃取。貸金庫室鍵の持出し・返却データの異常から発覚。
窃取した資金の使途FX投資衣服の購入、旅行借金返済、競馬・競艇の掛け金、宝くじ購入
被害補償40件・約7億円補償済み全額補償済み被害額確定後に賠償予定
発覚経緯被害者の申し出と内部調査で判明以前の不正行為の調査過程で被害者から申し出あり支店長が貸金庫室鍵のデータ異常を発見し内部調査を実施、行為者の不審行動が判明

分析結果

3金融機関の貸金庫を巡る不正では、次のような特徴がみえてきます。

  • 不正の手口は、予備鍵の不正使用
  • 行為者は、30代から40代の中堅行員
  • 窃取したのは、現金(三菱UFJでは金を含む)
  • 数年単位の不正(三菱UFJ、みずほは3年以上、ハナは6年近く)
  • 不正の発覚は、被害者からの申告・他の調査の過程・不審行動
  • 個人的な利得目的(投資、買い物、旅行、ギャンブル、借金返済)

本日のまとめ

三菱UFJ銀行の貸金庫事件発覚後、他の銀行でも同様の不正が行われているのではないかとの疑念が生じていました。

その後、みずほ銀行、ハナ信用組合でも同種の不正が行われており、「やっぱり」というのが率直な感想です。

財務捜査をしていて感じたのは、一つ一つの事件は形は違っても、同種の不正は必ずあるということです。
新しい独創的な不正は少なく、他でも同様の不正が起こっているのが普通です。

他社の不正は、自社でも起こりえることです。
その認識で不正防止に取り組むのが正解だと思っています。