簿記3級でも学習する「仮払金」。
本来の用途と異なり、賄賂資金等会社の不正支出に使われやすい勘定科目でもあります。
正しい仮払金
本来、仮払金は、
- 後日精算を予定している、一時的な概算払い
のために使用される勘定科目です。
例えば、
- 遠方へ出張する場合の概算旅費
- カード払いができない飲食店での接待
といった場合に使われるのが一般的です。
個人が数万円以上のお金を一時的にでも立て替えるのは負担になります。
会社のための支出なので、あらかじめ従業員に概算金額を渡しておくというのが「仮払金」。
後日、出張、接待などが終わったら、領収書とともに残額を会社に戻します。
これで仮払金の精算が終了。
仮払時に発生した仮払金の残高も精算されれば残高はゼロとなります。
これが本来の仮払金の仕組みです。
日商簿記3級の試験範囲にもなっている基本的な内容です。
黒い仮払金
一方、この仮払金を利用して不正な資金の支出に使われる事例も見られます。
会社から不正、不透明な資金を支出する場合、勘定科目に困ってしまいます。
例えば、役人に賄賂を渡すときなどです。
不正支出を会社の現金、預金から支出する場合、借方勘定科目を何にするか。
借方を費用勘定にすると、基本的に領収書が必要となります。
領収書がない支出は、不審な取引としてマークされてしまいます。
借方を資産勘定にすることも可能ですが、その場合費用勘定以上に面倒です。
貸付金とした場合、契約書の作成、受取利息の計上をしなくてはなりません。
有形固定資産であれば現物が必要になるうえ、資産台帳への登録、減価償却手続きもでてきます。
そこで使いやすいのが「仮払金」。
支出時点では領収書不要な上、ある程度まとまった金額でも不自然ではありません。
また、消費税も関係ないので、万円単位のラウンド数字で出金することも可能です。
実際もそうらしい
今、手元にある「贈収賄罪の理論と捜査「改訂版」」という本の中にも
例えば、仮払金勘定などは、贈賄資金の支出を仮払金として記帳し、後日交際費等架空経費に振り替え精算するといった虚偽不正の操作によく利用されている。
とあります。
仮払金も、本来ならばすぐに領収書とともに精算がされなければなりません。
しかし、このように不正な支出が行われるような会社の場合、精算がいい加減になっていることは、ままあることです。
仮払金の残高は、支払と精算の繰返しでゼロになっているのが基本です。
それなのに仮払金残高が、数百万円単位になっている会社もなかにはあります。
こうなると、仮払金名目で会社のお金が自由に使われていることになります。
多額未精算の仮払金残高から、不正に支出した仮払金を見つけるのは実際かなり困難です。
本日のまとめ
仮払金勘定を使った不正支出というのは、結構あるように感じます。
決算整理仕訳で強引に営業外費用、役員貸付金にしていることもありますし。
仮払金には要注意です。