遺言書を作成するときに頭を悩ませることの一つに「付言事項」があります。
以前のブログでも、少し触れたことがあります。
付言事項はあった方がいいのでしょうか。
遺言書の「付言事項」
遺言書の構成は、法的拘束力を有する「遺言事項」といわれる本文の部分と、法的拘束力のない「付言事項」に大きく分かれます。
本文の部分については、厳格な記載が求められます。
例えば、「自宅を長男に譲る」と書いた場合、「自宅」だけでは不動産の特定ができません。
また、「譲る」だけでは内容が曖昧です。
本文にあたる部分については、個人の気持ちよりも客観性、確実性が求められます。
一方、付言事項については法的拘束力がありません。
何を書くのも自由です。
一般的には、
- 遺産分割の理由
- 遺族への謝意
などが書かれることが多いと思います。
付言事項は書くべきか
付言事項の必要性については、意見が分かれます。
次のようにまとめることができそうです。
必要とする意見
- 遺言者の意図を明確に伝えられる
遺言書本文は、相続、遺贈の内容が事務的に書かれる文書となってしまいます。
なぜ、このような遺言書の内容としたかまでは、伝わりにくいことがあります。意図を書くことで納得感を持ってもらい、相続争いを防止する効果がありあます。
- 感謝の気持ちを伝えることができる
相続人に対して感謝の言葉を添えることで、家族の絆を深めることができます。相続をするのは財産に限ったことではありません。付言事項を通して、家族への想いを残すこともできるようになります。
- 法的効力がなくても、遺産分割協議の参考になる
付言事項は法的拘束力はありませんが、相続人が遺産分割を行う際の指針となることがあります。
不要とする意見
- かえって相続争いの火種になることもある
付言事項の内容も読み方によっては、かえって相続人が不満を持つことも考えられます。遺言書が公になるのは、遺言者が亡くなった後のことで、遺言者がさらにその内容を補足説明する機会はありません。
特定の相続人に対する評価が書かれていると、他の相続人がおもしろくないと感じることも考えられます。
- 遺言の内容が明確であれば、付言事項は不要
遺言の内容が十分に明確で合理的なものであれば、付言事項を記載しなくても問題は生じにくいといえます。むしろ、余計な説明を加えることで、相続人がそれぞれの解釈をしてしまうリスクもでてきます。
- 遺言書は法的文書であり、付言事項は不要
遺言書は法的な文書であり、簡潔に書きたいという希望もあるはずです。また、遺言書は相続手続きが終わった後に繰り返し読まれることは少ないと思います。
家族への感謝などは、手紙やエンディングノートなどに書いたり、日頃から口に出して伝える方がいつまでも記憶に残るはずです。
本日のまとめ
遺言書の作成にあたり付言事項を重視する傾向が増えてきたように思います。
特に感謝の気持ちは書かれることが多いようです。
付言事項を書く、書かないもそれぞれ遺言者のお気持ち次第です。
付言事項は急に書けるものではありません。
書くのであれば、早めに文を考えられることをお勧めします。