捜査の過程で他事件が発覚 ~ 不正はどうしてバレるのか

11月20日付け、日本経済新聞の記事によると、医療機器の継続的な使用の見返りに賄賂を受けたとして東京大学医学部准教授が逮捕されたとのことです。
東大医学部准教授を収賄疑いで逮捕 警視庁、医療機器巡り 日本MDMから寄付名目

現時点では逮捕の段階であり、嫌疑があるというだけです。
最終的に有罪かどうかはわかりません。

報道によると、捜査の端緒は、他の事件の捜査の過程とされています。
実際、他の事件の捜査をしているうちに、他の事件の端緒が見つかることはよくあることです。

不正の端緒とは

事件捜査には、不正の端緒が必要です。
「これは疑わしい」というきっかけがないと、捜査は始まりません。

不正の端緒には、大きく外部からもたらされるものと、内部で探すものとに大別されます。

外部からの端緒

不正の端緒の多くは、被害者など警察の外部からもたらされます。

例えば、

  • 被害届
  • 告訴状・告発状
  • 事件相談
  • 自首

などがあります。

ここから事件捜査が始まるのが通常です。

内部からの端緒

しかし、外部からの情報だけでは事件のすべてをカバーできるわけではありません。

外部からの情報の多くは、被害者からです。
直接の被害者がいない、贈収賄事件、選挙違反などでは、被害届の提出がありません。
告発状が出される可能性はありますが、件数は多くありません。

また、会社ぐるみの事件、経営トップによる不正などは、外部から情報提供されるとは限りません。

そこで、警察は、公刊資料、公表情報、マスコミ報道などさまざまなルートから事件の端緒をリサーチしています。

その一つが、現在行っている事件捜査で得た情報の分析です。

過去の事例

事件捜査の過程で、他の事件が発覚することは、たびたびあります。

同一組織、グループ内での不正発覚

ある事件を捜査しているうちに、同じ組織内での不正が発見されるケースはたびたびみかけます。
不正を行う組織には、不正を行う土壌があります。
最初の捜査をきっかけに、組織の膿が続々と明らかになることがあります。

撚糸工連事件では、元課長の横領事件の捜査をきっかけに、組織的な不正や政官界への贈収賄事件へと芋づる式に事件が発展しています。

また、政治資⾦パーティー収⼊の⼀部が政治資⾦収⽀報告書に記載されていなかった事案でも、多くの会派の会計責任者や国会議員らが政治資金規正法違反罪で起訴・略式起訴がされています。

他の組織の不正発覚

一方、ある事件を捜査しているうちに、他の組織の不正が見つかることもあります。

例えば、⽇本⼤学付属病院の建て替え⼯事を巡る背任事件の端緒は、医薬品卸会社の談合事件の捜査で見つかった不透明な資⾦の流れとされています。事件はその後、元理事長の脱税事件へと発展しています。

また、全日本私立幼稚園連合会元会長による業務上横領事件の捜査の過程で、文科省幹部職員が元会長から接待を受けていたことが発覚し、幹部職員6人が国家公務員倫理規程に抵触するとして懲戒処分を受けてもいます。

ほかにも、自動車販売店の詐欺事件の捜査において信用金庫の顧客情報を記載した資料などが関係先から発見され、これをきっかけに信用金庫の職員が顧客情報を漏洩(不正競争防止法違反)したとして逮捕された事案などもあります。

本日のまとめ

捜査の端緒は、他の事件の捜査の過程でも見つかることがあります。
警察では押収した資料は徹底的に分析していますし、捜査の過程で多数の関係者から聴取も行っています。

絶対にバレない不正ということは、ないものと思った方が良さそうです。