2025年5月29日に、福島県に本店を置くいわき信用組合に対して金融庁東北財務局から業務改善命令が出されました。
その理由をみると、
- 不正融資の実行
- 不正融資が発覚しないための隠蔽
- 当局への虚偽報告
- 内部管理体制・法令等遵守態勢の重大な不備
などがあがっています。
また、背景の一つとして
長期に亘り理事長・会長を務めてきた前会長が、理事の人選及び任命の専権を有しているなど、組合内で絶対的な存在となっていた。
とも記されガバナンスが機能していなかったこともあげられています。
経営者による不正、従業員による不正
会社を舞台とした不正には、経営者によるものと、従業員によるものの2つのパターンがあります。
会社不正とくくられることがありますが、両者は異質と思っています。
従業員による不正
従業員による不正としては、経理担当者による横領や、従業員による経費の水増し請求などが代表的です。
基本的に、従業員による不正は、社内で防せぐことが可能です。
もともと従業員は、就業規則などのルールに従って業務を行う必要があります。
従業員には上職者がいますし、同じ部屋で仕事をしているはずです。
ルール違反について身近にチェックを働かせることができます。
会社が適切に管理していれば、社内で不正を防止することは可能です。
取引業者と結託したキックバックなどは、会社外で行われるためチェックが及びにくいところはありますが、人事ローテーションなどである程度の防止は可能です。
経営者による不正
これに対し、会社経営者の不正を防止するのは簡単ではありません。
まず、会社経営者の行動を厳しく縛るルールが存在しません。
会社法などに定める忠実義務や善管注意義務はありますが、抽象的です。
就業規則のように手続きを定めたものではありません。
経営者をチェックする会社の機関としては、取締役会や監査役などがあります。
しかし、取締役や監査役を決めるのは、多くの場合経営者です。
さらに経営者は、取締役や監査役と同じ部屋で業務をしているわけではありません。
経営者に与えられている裁量も大きく、人事権も掌握しています。
経営者による不正を防止するのは難しいものがあります。
外部によるチェック
社内によるチェックが難しい場合、外部からのチェック体制が重要となります。
特に、公的色彩の強い金融機関の場合なら、なおさらです。
信用組合を監督する金融庁では、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を定め、ガバナンス体制の構築も含め、これをチェックすることとなっています。
また、いわき信用組合のディスクロージャー誌をみると、法律に基づき、公認会計士による監査を受けてもいます。
さらに、「職員出身者以外の理事2名の経営参画により、ガバナンスの向上や組合員の意見の多画的な反映に努めております。」とも書いてあります。
これらのチェック体制がどこまで有効だったのかについても、気になるところです。
本日のまとめ
いわき信用組合の不正融資に関しては、第三者委員会による調査・報告も行われ「我が国の金融機関の歴史を見ても類例をみないほどに悪質な事案」と評されています。
- 不正融資
- 迂回融資
- 借名名義
などバブル崩壊後の金融不良債権事犯を彷彿とさせるような用語も多数出てきます。
今後、さらに調査等が行われ、全容の解明と同種事案の発生防止が行われることを期待しています。