意外と多い学校積立金の横領事案

先日、千葉県内の公立小学校の教頭が、保護者から集めた修学旅行積立金など1,331万円を着服したとして懲戒解雇処分を受けたとの報道がありました。

修学旅行をはじめとする、学校積立金の横領は頻繁に発生しているように感じています。

過去の事例

およそ20年ほど前から始めている手元のスクラップ記事を検索すると、修学旅行を含む学校積立金の着服事件はかなりの件数にのぼっていることがわかります。

ざっとみると、次のとおりです。
スクラップをするのに統一的な基準を設けているわけではないので、網羅性はありません。

2006年 岐阜県高校教諭 900万円
2008年 東京都中学校事務職員 2,300万円
2008年 埼玉県中学校教諭 825万円
2008年 宮城県中学校校長 1,103万円
2008年 茨城県高校事務職員 930万円
2008年 秋田県高校事務長 1,160万円
2011年 秋田県中学校校長 223万円
2019年 千葉県中学校主任主事 466万円
2024年 長崎県高校職員 2,200万円
2024年 福井県高校事務職員 1,466万円

なぜか2008年が突出していますが、他の年もそれなりに多い気がします。

不正がわかったきっかけとしては、

  • 業務引継ぎ
  • 旅行会社からの旅費の請求
  • 使い込みを告白
  • 内部監査

などがあげられています。

学校積立金が不正の対象となる理由

学校積立金が横領の対象となりやすいのは、税金などを原資とした公金ではなく、組織的な管理がされにくい点かと思います。

学校運営に必要な教職員の給与、教材費、事務用品費などは、公金から支出され会計責任者も置かれているはずです。
警察でも、帳簿のチェックはもちろんのこと現物確認も含めた監査が行われていました。

これに対し、保護者から集めた積立金については、学校からみた場合「預り金」となりそこまで厳密なチェックがされていないのかもしれません。

都立学校では、「学校徴収金事務取扱規程」を定めているようですが、管理については「会計自己点検」となっています。

学校徴収金事務取扱規程の制定について

不正にまつわるナゾ

それにしても、積立金の着服はナゾが多いと感じます。

必ず発覚するのに

学校積立金の管理者は、学校の教職員になります。
公立学校であれば、定期的に人事異動があります。
異動がなくても、さきほどの「学校徴収金事務取扱規程」によると「継続して3年を超えて同一職員に分掌させてはならない」とあり、必ず引継ぎがされることになっています。

人事異動のない経理担当者が1名の会社であれば不正が発覚しない可能性もありますが、学校の担当者には必ず異動があります。

隠し通すことができないのに、着服を行う理由がわかりません。

支払いが発生するのに

修学旅行積立金は、将来確実に必要なお金に見合う金額を集めているはずです。
旅行の前後には、ほぼ全額を旅行会社に支払うことになります。
積立金を使い込んだままにすることはできず、払い込みをしないとなりません。

生徒1人あたり数万円としても、100人いれば相当な金額になります。
もちろん全額を横領しているわけではないとは思いますが。

この支払をどのように行う予定だったのか。
これもわかりません。

お金が必要だった理由

学校の教職員であれば、世間一般水準の給料は支給されています。
勤務に見合う給与であるかは別にしても、絶対額はそれなりにあるのだと思います。

修学旅行の積立金などに手を付けざるを得ないほど困窮しているとは考えられません。

なぜ、それほどのお金が必要だったのかも疑問です。

本日のまとめ

学校では、修学旅行以外にも各種集金が行われています。
近年では、集金袋からキャッシュレス制度への移行も進んでいるようです。

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保護者は現金を用意する手間が省けるほか、子どもに現金を持たせるリスクも減り、学校側の事務負担も軽減されているようです。

資金管理の透明性も高まり不正防止にも役立つようにも思います。