業務上横領事件や詐欺事件を伝えるニュースでは、「今後、警察では資金の流れを中心に捜査を進めることにしています。」というフレーズがよくつかわれます。
経済事件の捜査で資金の流れを追うことは、確かに重要なポイントです。
お金の流れとは
お金の流れとは、不正に入手した資金の使い道、つまり、使途ということです。
容疑者が手に入れた資金が何に使われたかということになります。
財務捜査の基本は、お金の流れを追うことにあります。
業務上横領事件では必須
お金の流れを追うことは、横領事件、とくに経理担当者による業務上横領事件では必須の捜査項目です。
横領罪は、「自己の占有する他人の物を横領した」ことで成立します。
この「横領」とは、他人の財物を自分のもののように処分することを意味します。
管理を任されていた他人のお金を
- 自分の買い物に使う
- 自分の預金口座に入金して使う
- 担保に提供する
- 発見できない場所に隠す
といった処分行為が必要となります。
会社が管理している現金が横領されたことを示すには、単にポケットに入れただけではなく、どのように使ったのかが問題となります。
横領事件捜査では、資金の流れを追うことは必須となります。
詐欺の立証にも必要
詐欺事件では、嘘を言われた相手側が、その嘘を本当のことだと信じてお金を相手に渡してしまいます。
このときに、容疑者が被害者に言った内容が本当かどうかを判断する方法の一つがお金の使い道です。
例えば、
- 今すごく儲かる××に投資しませんか
と言われてお金を払ったのに、相手から何の返金も受けられなかったという事案の場合です。
お金が戻ってこない理由は、相手が投資に失敗し、返金したくても返金できないためかもしれません。
これを判断するには、相手に渡したお金が何に使われたかを見るのが基本です。
仮に相手が言うとおりに、××事業に投資しているのであれば投資の失敗であり、詐欺とは言い難いことになります。
一方、相手が受け取ったお金が××事業にまったく使われずに、自分の遊興費に使っていれば、詐欺の可能性が濃厚になります。
また、詐欺で騙し取ったお金の使い道は、詐欺の動機です。
騙してからお金の使い道を考える人は稀です。
お金を使いたい動機があり、そこから詐欺を考えるのが普通です。
このように、詐欺事件捜査では資金使途の解明を行うことになります。
人間関係がわかる
お金の使い道で、人間関係が分かるということがあります。
人と人との間でお金が動けば、そこに何らかの関係があるのが普通です。
例えば、
- 給料の支払い
- 借金
- 物の売買
- 何らかの報酬
などがあったはずです。
ここから、一見して関係がないと思われる人の間に人間関係があることがわかったり、共犯事件の関係性が判明することがあります。
複数人が役割を分担したと考えられる場合、取得した資金の分配状況を突き止めることで共犯関係が浮き彫りになることがあります。
本日のまとめ
詐欺事件など逮捕報道でよく使われる、「今後、カネの流れを追うなどして、捜査を進めていく予定です」のような定型フレーズ。
ほとんどの場合、カネの流れを追った結果、逮捕に至ったのだと思います。
逮捕後は、内偵段階で把握したカネの流れに間違いがないかを確認することに重点が置かれることが多いように感じます。
いずれにしても、お金の流れが財務捜査の基本であることは間違いありません。