今後財務捜査官の採用は難しくなるのではと思う理由

このところ公務員試験への応募者数が減少しているとの報道を目にすることが多いような気がします。
警察官の採用が難しくなっているとの話も聞きます。

おそらく将来的に財務捜査官の採用も難しくなるのではと感じます。

財務捜査官の採用状況

広報されている資料をみると、財務捜査官は全国で約50名が在籍しているようです。
この50名という人数は、長年変わっていないように感じます。
途中で定年になったり、自己都合で退職した方もいるはずです。
そう考えると、退職者の補充はコンスタントにできているのだと思います。

現在、警視庁でも財務捜査官の募集をしています。

警視庁特別捜査官(経験者採用) | 採用情報 | 令和7年度警視庁採用サイト
警視庁警察官・職員の採用試験(選考)受験希望者向けのサイトです。

処遇の問題

先日の日本経済新聞には、「法曹増でも裁判官不足の怪 見合わぬ待遇、弁護士に流出」という興味深い記事が掲載されていました。

法曹増でも裁判官不足の怪 見合わぬ待遇、弁護士に流出 - 日本経済新聞
法曹界でトップエリートとされてきた裁判官のなり手不足が深刻だ。法曹人口は10年で3割弱増えたのに、判事補と呼ぶ若手裁判官は2割減った。企業法務需要が増えたことに伴い、大手法律事務所が最優秀層の学生らを好待遇で積極採用しているためだ。それでも採用方法を抜本的に見直す機運は乏しく、放置すれば司法システムが揺らぎかねない。2...

法曹人口は10年で3割増加したにもかかわらず、若手裁判官は2割減ったという内容です。
その背景には、処遇の問題があるようです。

例えば、

  • 大手法律事務所の初任給は1,000万円超に対し、裁判官の初任給は500万円程度
  • 裁判官には地方への転勤もある
  • 官舎のなかには、昭和時代の古い物件も残る

といったことが挙げられています。

処遇のうち給与を上げるというのは簡単ではないにしても、効果は見込めます。

待遇のメインは給与面だと思いますが、公務員として勤務した経験から、勤務環境ももう少し改善できないかと感じることがありました。

具体的な勤務環境

私は平成11年に民間から財務捜査官へ転職しましたが、その頃は、民間と公務員の勤務環境の差は今ほどなかったように思います。

当時民間企業でもパソコンが普及し始めたばかり。
書類作成は手書きからワープロへ移行された頃。
私もまだ携帯電話を持っていませんでした。

民間も公務員も、決められた時間に職場へ出勤でした。

それが年代が進むにつれ徐々に差が付いてきたように思います。

給料面は別にしても、私が公務員として勤務していた環境は必ずしも良好とはいえない状況でした。

  • 庁舎
    古い建物の狭い部屋で大人数が勤務(入りきらないときは、プレハブ棟や用途を変更して対応) 冷暖房は集中管理(部屋ごとの調節不可)
    他部署から派遣されるときには折り畳み机とパイプ椅子で仕事
  • 働き方
    原則8時30分勤務開始(出勤はそれよりも前)
    フレックス、リモートワークは例外運用
    外泊するときには事前届出が必要
  • IT、DX
    ノートパソコンの性能が古く動作が遅い
    インターネットが使える端末がほとんどない
    業務手順が紙ベース

といった状況でした。
2024年3月までの話なので、状況は変わっているかもしれません。
和式トイレも洋式に変更されつつありますし。

もちろん贅沢をしたいということではありません。
ただ、民間と比べた場合、勤務環境に大きな差は出ていると思います。

数値化できませんが、硬直的な組織や前例踏襲が根強く残っている職場文化も民間との差を感じます。

本日のまとめ

公務員の人気低下に歯止めをかけるために、給与を上げようとする動きがあります。
これは、これで大切です。
初任給はもちろんですが、財務捜査官のように民間からの人材を受け入れる場合にはなおさらです。

仕事自体にやりがいや興味があったとしても、給料が下げてまで転職に踏み切るのは難しいのが現実です。

給与面の処遇に加えて、広い意味でも勤務環境も変えていかないと、財務捜査官も含めた外部からの採用は難しくなるのではと危惧しているところです。