法人に遺贈を行う場合の税務上の取扱い

相続を考えるうえで、法人に財産を相続させたいと思われることがあるかもしれません。

「法人」といっても、株式会社、公益法人などの種類がありますが、今回は株式会社に遺贈する事例を取り上げます。

法人に財産を遺贈できるのか

先日あるサイトをみていたところ「株式会社に自分の財産を相続させることが可能か」という相談に対し、「相続はさせられないが、遺贈は可能である」という専門家の回答がありました。

この回答自体は誤りではありませんが、「できる」ということと「すべき」であることとは少し意味合いが違ってきます。

特に税金面が複雑になります。
実際には譲渡をしていないのに譲渡とみなされるなど、税務上の考えも難解です。
また、納税資金の準備も必要です。

個人が法人に財産を遺贈した場合、次の3つの税金が関係してきます。

税金の問題

被相続人に対する税金(所得税)

被相続人が法人に対し財産を遺贈した場合、そこに譲渡所得の対象となる土地、建物等が含まれていることがあります。

その場合、遺贈により時価で譲渡があったものとみなして譲渡所得課税がされることになります。

例えば、1,000万円で購入した土地が相続開始時点で5.000万円に値上がりしている場合、値上がり益4,000万円に対して譲渡所得が課税されます。

実際に譲渡しているのであれば売却代金から税金を納めることができますが、現実に売却していないにもかかわらず税金が発生するため納税が難しくなります。
また、準確定申告になるため、申告・納付期限も相続開始後4か月以内と期間的な制約も厳しいものがあります。

なお、亡くなった被相続人が申告・納付することはできないため、相続人、包括受遺者がこれを行うことになります。

法人に対する税金(法人税)

法人が遺贈により無償で不動産等を取得した場合、これを受贈益として収益に計上することになります。

この受贈益に対して法人税が課されることになります。
先ほどの例では、5,000万円の土地を無償で取得しているためこの額が受贈益です。

この時点では土地をもらっただけなので、収入があるわけではありません。
それでも税金の納付は必要となります。

法人の株主に対する税金(贈与税)

課税はこれだけではありません。

株主は、土地という財産が増えたことで、自分が保有する株の価額も上昇しました。
この増加分は、遺贈者から株主への贈与として扱われます。
「みなし贈与」です。

この贈与に対しても税金が課されることになります。

本日のまとめ

以上、原則的な取扱いについて概略をお伝えしました。
法人の財務状況により異なることがあるため、一般的な事例としてお考え下さい。

いずれにしても、税金関係はかなり複雑となってしまいます。
法人への遺贈をお考えの場合、税金面での扱いについて事前に確認することをお勧めします。

なお、今回のブログについては、次の書籍を参考としました。

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