電子帳簿保存法について、対応が必要だと感じられている方は多いはずです。
制度やルールについては、国税庁のHPに詳しく掲載されています。
しかし書かれている内容は、大企業から中小企業までを対象とし、また、保存方式もマイクロフィルム(COM)までを想定した膨大な資料となっています。
細かい話をすれば書籍1冊程度の分量となります。
ここでは、マネーフォワードを利用している、年商5千万円以下の一般的な中小企業の電帳法対応について話をしていきます。
また、パソコンのディスプレイ、プリンター、スキャナー要件も細かく決まっていますが、これらの要件もクリアしているという前提とします。
なお、他のブログ記事も同様ですが、内容についてすべての事例を完全に網羅しているわけではなく、記事内容の保障も行っていません。
実際の適用においては、国税庁のHP等で最新の情報をご確認願います。
電子帳簿保存法の制度概要
電子帳簿保存法には3つのカテゴリーがあります。
1つめは、仕訳帳、総勘定元帳といった帳簿及び貸借対照表、損益計算書等の決算関係書類等の電子保存
2つめは、紙で受領した資料のスキャナ保存
3つめは、インターネット取引等でデータとして受領した請求書、領収書等のデータ保存
です。
このうち「電子帳簿・書類」と「スキャナ保存」は法律上任意です。
ただ、任意とはいえ、ルールに従って対応した場合には紙での保存が不要となり、ペーパーレスになります。
また、「電子帳簿・書類」については「一般」と「優良」の区分があり「優良」に該当すれば、税制上の優遇措置を受けることができます。
これに対し、「電子取引データ」については、すべての事業者が対応しなければなりません。
マネーフォワードクラウドでの電帳法対応は、次のようになっています。
電子帳簿・書類
まず、1つ目のカテゴリーである「電子帳簿・書類」です。
国税庁 電子帳簿・電子書類関係
マネーフォワード 【電帳法かんたんガイド】「電子帳簿等保存」に対応するために必要な設定・操作について
対象となる書類は、会計ソフトなどを利用して作成した仕訳帳、総勘定元帳、決算書のほか、パソコンを使って作成した契約書、請求書などになります。
電子帳簿・書類の保存は任意となっています。
ただし、国税庁が定めた要件を満たした場合、紙の帳簿を保存する必要はなくなります。
また、「優良な電子帳簿」に該当しあらかじめ届出書を提出している場合には、過少申告加算税の割合が原則10%から5%に軽減される税制優遇措置が設けられています。
電子帳簿・書類の要件は、次のとおりです。
- 税務調査時のデータ提供
税務調査時に、データのダウンロードを求められたときにこれに応じられるようにしておくことです。
優良な電子帳簿の場合には、原則として対応は不要です。 - マニュアル等の備付け
マニュアルに関しては、システムに関するものと、事務手続きに関するものの2種類があります。
マニュアルについては、オンラインマニュアルでも良いとされています。
マネーフォワードのシステムについては、オンラインで対応可能です。
一方、会社の事務手続きを明らかにした書類は、作成が必要となります。
こちらは、国税庁のHPにサンプルがあるので、こちらを参考に作成します。
参考資料(各種規程等のサンプル) - 見読可能性の確保
一般的なパソコンとディスプレイ、プリンタがあれば問題ありません。
また、パソコンの操作マニュアルが必要になります。
以上、3点が電子帳簿の要件です。
さらに、次の3点が加わると「優良」となります。
なお、優良とするには、税務署への届け出が必要となります。
- 訂正・削除履歴の確保
仕訳データについて、訂正・削除を行った場合、その履歴が残るシステムが必要です。
これに対応しているマネーフォワードは、クラウド会計のビジネスプラン(スモールビジネスは対象外)、クラウド確定申告となっています。
対象となっているプランであることが確認できた場合、事業者設定の「帳簿保存」にチェックマークを入れておきます(下図出典 : マネーフォワードHP)。
このチェックマークは、年(度)の開始前に入れておきます。
1件でも取引が入力された後は変更ができません。 - 複数帳簿間の関連性確保
クラウド会計・確定申告では取引№で複数帳簿間を紐づけできるため、特別な対応は必要はありません。 - 検索機能の確保
1:取引年月日・取引金額・取引先により検索できること
2:日付または金額の範囲指定により検索できること
3:2以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること
の3要件があります。
このうち、日付、取引金額の検索はクラウド会計・確定申告の仕訳帳などで可能です。
ただし、取引先については、ご自身で入力する必要があります。
以上まとめると、電子帳簿等保存で実質的に必要になる対応は、
- 国税庁HPを参考にした事務処理規程の整備
ということになります。
また、優良な電子帳簿の場合には、
- 対応するクラウド会計・確定申告の「事業者」画面から「仕訳履歴保存機能を利用する」にチェックマークをつける。
- 取引データに取引先を入力する
- 税務署への届出
が必要になります。
スキャナ保存
2つめのカテゴリーは、スキャナ保存関係です。
国税庁 スキャナ保存関係
マネーフォワード 【電帳法かんたんガイド】「スキャナ保存」に対応するために必要な設定・操作について
対象となる書類は、取引先から紙で受領した契約書、請求書、領収書等です。
これら書類についてスキャナ保存について要件を満たした場合には、紙が廃棄できるというメリットがあります。
スキャナ保存の要件としては、
- ファイルの画質要件
一定の解像度でスキャン保存することになります。 スキャナ保存の期間制限
原則7営業日以内にスキャンを実施します。
この期間を2か月延長する場合には、社内規程を作成する必要があります。
スキャナ保存に関する規程サンプルは、国税庁HPに掲載されています。
参考資料(各種規程等のサンプル)
会社の実情に合わせて適宜修正することになります。- タイムスタンプの付与、ヴァージョン管理
スキャナデータに電子的なタイムスタンプを付与し、その後の訂正・削除記録を残すという要件です。
マネーフォワードクラウド会計・確定申告、クラウドBoxで対応しています。
「事業者」ページから「スキャナ保存機能を利用する」にチェックマークを付けておきます(下図出典 : マネーフォワードHP)。 - 帳簿との相互関連性確保
マネーフォワード側のシステムで対応できます。 - 見読可能性の確保
14インチ以上のディスプレイ、カラープリンター等が必要となります。 - システム概要書等の備付け
オンラインマニュアルでも構いません。 - 検索機能の確保
日付、金額は会計データに入力済みなので、「取引先」情報の入力を忘れずにしておく必要があります。
などがあります。
この中で実質的に対応が必要なのは、
- スキャナ保存の期間制限を守る
- ヴァージョン管理として「事業者」ページから「スキャナ保存機能を利用する」にチェックマークを付ける。
- 検索機能の確保として取引先を入力する
- 各種マニュアルを整備する
の4点です。
スキャナ保存の期限は、最長2か月と7日以内になっているため、書類をため込まなければ導入は可能です。
電子取引データの保存
3つめのカテゴリーは電子取引データの保存です。
国税庁 電子取引関係
マネーフォワード 【電帳法かんたんガイド】「電子取引データ保存」に対応するために必要な設定・操作について
対象となる電子取引データは、インターネット取引でやりとりした請求書、領収書等の取引関係データなどが該当します。
電子帳簿・書類、スキャナ保存と異なり、電子取引データの保存は必須となっています。
やりたくないということは認められていません。
紙にプリントして保存することも不可です。
スキャナ保存の要件は次の3つです。
- 検索機能の確保
2期(年)前の売上高が5,000万円以下であれば、税務職員から電子取引データのダウンロードを求められたときに対応できるようにしていれば、検索機能の要件は不要となっています。 - 真実性の確保
タイムスタンプなどいくつかの条件がありますが、事務処理規程を定め、そのとおりに運用する方法も認めています。
「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」が法人、個人事業者用としてそれぞれ国税庁HPに掲載があります。
参考資料(各種規程等のサンプル) - 見読可能性の確保
ディスプレイ、プリンターの備付け
結論として会社・事業主からアクションを起こすのは、「改ざん防止のための事務処理規程」ということになります。
なお、2024(令和6)年1月1日から適用された新たな猶予措置として
- 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
- 税務職員から、電子取引データについて「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じることができる場合
には、改ざん防⽌や検索機能などの要件を不要とし、単にデータを保存しておくだけで構わないという制度が設けられました。
資金繰りや人手不足等の理由で電子データの保存に対応できない場合でも、「相当の理由がある」ことの対象となります。
本日のまとめ
会計周りの電子化という流れの中で、3つの制度が相互に関連しており、複雑な制度となっています。
今回は、マネーフォワードクラウド会計・確定申告を利用している中小企業に絞った概要となっています。
いきなり電子帳簿保存の3つについて対応できない場合、義務化されている電子取引データの対応を先行して行い、その後他の2つに取り組むというのも一つの方法ではあります。