法定相続情報一覧図による相続手続き

2017年から開始された「法定相続情報証明制度」。
この制度で法定相続情報一覧図を利用すると、不動産登記、預金口座の相続等を1通の用紙で済ませることができます。

似たような名前に「相続関係説明図」があります。
こちらは、公的な認証を受けていないため、相続手続きを行うには戸籍をすべて添えて手続きをする必要があります。

「法定相続情報一覧図」とは

「法定相続情報一覧図」とは、戸籍謄本とともに相続関係を一覧に表した図を法務局に提出し、その内容が正しいことを登記官が確認し、認証文を付けた写しをいいます。

詳しくはこちら → HP

法定相続情報一覧図のメリットは、相続手続きがこの1枚で完結すること。
しかも、一覧図の交付は無料でしてもらえます。
登記官の確認を経ているので、内容に間違いはありません。
戸籍の原本の束を提示なくても、相続登記、預金の払い戻し手続、相続税の申告等に幅広く使うことができます。

自分で戸籍を収集する場合、戸籍の取得漏れが生じることがあります。
この場合も法務局で法定相続情報一覧図を認証する際に確認をしているので、もし不備があれば指摘がされます。
遺産分割協議も終わり、いざ相続手続きに入った段階で不備が判明するといった事態を防ぐこともできます。

必要書類および必要となる場合がある書類については、こちらに説明があります。
また、代表的な相続については、主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例として様式が用意されています。
エクセル形式も用意されているので、空欄に穴埋めするだけで完成します。

もちろん万能ではない

このように便利な法定相続情報一覧図ですが、すべての相続に使えるわけではありません。
使えない場面として多いのは、

  • 戸籍に基づいて作成されるため、相続放棄が反映されない
  • 相続人のうち、日本国籍を有しない者がいる場合には相続情報一覧図の交付の申し出ができない

というようなケースです。

これ以外にもありますが、制度上の限界です。

一方、実務的には、次の点にも注意が必要です。

即日交付は受けられない

相続情報一覧図を作成し、法務局に持ち込んでも当日に認証交付を受けることはできません。
ホームページには「数日」と書いてあることもありますが、通常、2週間程度かかります。
その間、戸籍一式は法務局に預けてしまいます。
相続手続きの日数に余裕をもたせることが必要です。

相続手続きが少ない場合は面倒かもしれない

相続手続きが、不動産登記と銀行程度であれば、これまでどおり戸籍を持ち込んでも手間はかからないかもしれません。
法定相続情報一覧図の作成に法務局に行くのに1往復は必要です。
なお、法務局の手続きは、郵送でも対応可能です。

本日のまとめ

私も相続手続きのご依頼をいただいたときには、法定相続情報一覧図を利用することにしています。
税理士、行政書士も相続人からご依頼を受けて、代理人として手続きをすることができます。

遺産分割協議を済ませれば、法定相続情報一覧図一枚でほとんどの相続手続きを済ませることができます。
相続登記の義務化も始まっています。
相続手続きは、早めに、かつ、確実に行うことをお勧めします。