「いじめ」は犯罪になるのか

こどものいじめ問題は、古くから指摘されながらもいまだに深刻な状況が続いています。
いじめ問題を解決するには、いくつかの方策が考えられます。

その一つとして、文部科学省は「教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談・通報の上、警察と連携した対応を取ることが必要である。」と書いています。

「いじめ」のうちには、犯罪行為に該当するものもあります。

「いじめ」の定義

公的な「いじめ」の定義としては、「いじめ対策基本法」に条文があります。

(定義)
第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

出典 : e-Gov

この定義では、程度の軽いものから、重いものまでさまざまなケースが想定されます。
少し漠然とした感じです。

文部科学省の「いじめの定義の変遷」を見ると、いじめの中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められるものがあるとしています。

「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。これらについては、教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談・通報の上、警察と連携した対応を取ることが必要である。

参照 : https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/26/1400030_003.pdf

具体例

文部科学省が、令和5年2月7日付けで教育委員会等に対して発出した「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」には、「警察に相談又は通報すべきいじめの事例」が記載されています。

以下、通知文の抜粋です。

学校で起こり得る事案の例該当しうる犯罪
〇ゲームや悪ふざけと称して、繰り返し同級生を殴ったり、蹴ったりする。
〇無理やりズボンを脱がす。
暴行
○ 感情を抑えきれずに、ハサミやカッター等の刃物で同級生を切りつけてけがをさせる。傷害
○ 断れば危害を加えると脅し、性器や胸・お尻を触る。強制わいせつ
○ 断れば危害を加えると脅し、現金を巻き上げる。
○ 断れば危害を加えると脅し、オンラインゲームのアイテムを購入させる。
恐喝
○ 靴や体操服、教科書等の所持品を盗む。
○ 財布から現金を盗む。
窃盗
○ 自転車を壊す。
○ 制服をカッターで切り裂く。
器物損壊等
○ 度胸試しやゲームと称して、無理やり危険な行為や苦痛に感じる行為をさせる。強要
○ 本人の裸などが写った写真・動画をインターネット上で拡散すると脅す。脅迫
○ 特定の人物を誹謗中傷するため、インターネット上に実名をあげて、身体的特徴を指摘し、気持ち悪い、不細工などと悪口を書く名誉毀損、侮辱
○ 同級生に対して「死ね」と言ってそそのかし、その同級生が自殺を決意して自殺した。自殺関与
○ 同級生に対して、スマートフォンで自身の性器や下着姿などの写真・動画を撮影して送るよう指示し、自己のスマートフォンに送らせる。
○ 同級生の裸の写真・動画を友達1人に送信して提供する。
○ 同級生の裸の写真・動画をSNS上のグループに送信して多数の者に提供する。
○ 友達から送られてきた児童ポルノの写真・動画を、性的好奇心を満たす目的でスマートフォン等に保存している。
児童ポルノ提供等
○ 元交際相手と別れた腹いせに性的な写真・動画をインターネット上に公表する。私事性的画像記録提供(リベンジポルノ)
令和5年2月7日付け「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」を加工して作成

本日のまとめ

「いじめ」のうちには、犯罪行為が含まれていることがあります。
個々の事案ごとに、対応は一様ではありません。

犯罪に該当するからといって、ただちに警察に相談・通報するのが適切とは限りません。
文部科学省の文書にも「教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえ」との記載がされています。

それでも態様によっては、警察への連携が必要な場合もあれば、また連携によりいじめが解消に向かった事例もあるようです。
いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)【概要】」という資料にも、

学校と警察が連携することで事案が解消に向かった好事例を周知
例)警察からの聴き取りによる事案の解明、警察からの注意・説諭による事案の解消
SNS上での児童ポルノ事案における警察の早急な対応による拡散防止 等

と書かれています。

犯罪であれば警察の対応が可能です。
警察への相談というのも、いじめ問題解決の一つの方法として効果的なようです。