減価償却費の計算方法~個人事業(定額法)

事業を始めたばかりの方にとって、「減価償却」は難しく感じるかと思います。
私も初めて簿記を習ったときには、考え方を理解するまで時間がかかりました。

減価償却とは

減価償却とは、固定資産について、「取得価額を耐用年数に応じて費用化する手続き」ということができます。

例えば、300万円で自動車を購入したとします。
この場合、購入時に支払った300万円をその年の費用に全額計上することはできません。
これだと、購入した年に費用が突出してしまいます。
事業として車を購入した目的は、自動車で営業をするなどして収益を得ることにあります。
自動車を購入した年だけに費用を全額計上すると、売上と費用のバランスが取れなくなります。

自動車は新車であれば、税法上耐用年数は6年です。
そのため、毎年費用とできるのは、300万円÷6年=50万円となります(単純化しています)。
この毎年計上される50万円を減価償却費といいます。

税法では、資産の種類、用途等に基づき耐用年数(自動車の場合6年)が決められており、その年数を法定耐用年数といいます。

減価償却の対象となる資産

減価償却の対象となるのは、

  • 使用可能期間が1年以上かつ取得価額が10万円以上の固定資産

具体的には、建物、機械装置、自動車、器具備品(パソコン)などが該当します。

しかし、10万円以上の固定資産すべてについて減価償却するわけではありません。
次の2つの例外があります。
なお、この2つの例外については、適用する・しないは、任意となっています。

詳しくは 国税庁HP を参照ください。

例外1:10万円以上20万円未満(一括償却資産)

取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一括償却資産として法定耐用年数に関係なく3年間にわたり減価償却することが認められています。

例外2:30万円未満(少額減価償却資産)

取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産については、少額減価償却資産として法定耐用年数に関係なくその年に経費として算入することが認められています。

ただし、適用対象は、青色申告事業者で、取得資産の合計額が年間300万円以下などという条件があります。

減価償却の具体例

簿記の教科書を見ると、減価償却の方法には、定額法、定率法などが紹介されています。
その中でも個人事業が原則的に使用するのは「定額法」となっています。

定額法の場合、減価償却費の計算は、次のように行います。

減価償却費 = 取得価額 × 耐用年数に応じた償却率 × 事業供用月数/12

上記計算をするには、

  • 取得価額
  • 償却率
  • 事業供用月数

の3つが必要となります。

取得価額

取得価額は、購入に要した金額、つまり、支払った金額のことです。
難しい話ではありませんが、若干注意すべき点もあります。

例えば、自動車については、購入時に本体価格以外の自動車税、重量税、リサイクル預託金なども含んで支払うため、明細書を確認して取得価額を判定する必要があります。

他の資産についても、購入に際して支払う付随費用があれば、どこまでを取得価額に含めるのかを確認しないとなりません。

耐用年数に応じた償却率

耐用年数は、国税庁の耐用年数表を使います。
この耐用年数表は、新品の場合です。
中古資産の場合には、別途検討します。
主な減価償却資産の耐用年数表 → 国税庁HP

ここで耐用年数が求まったら、これに対応する償却率表で償却率を探します。
減価償却資産の償却率等表 → 国税庁HP

例えば、個人事業を始めるにあたり、営業に使う自動車を購入した場合、

1 耐用年数表で耐用年数を探す
<車両・運搬具>
一般用のもの→その他のもの 6年

2 耐用年数に応じた償却率を探す
平成19年4月1日以後取得 0.167

となります。

事業供用月数

固定資産を年の途中で取得、売却した場合には使用していた月数を数えて減価償却費を計算します。
個人事業主が、12月に自動車を購入しても、1年分の減価償却費が認められるわけではありません。

なお、計算式には「事業供用」と書いてあります。
購入したけれども「倉庫に入れて使っていない」という状態では、事業供用とはなりません。

(例)200万円の乗用車を7月に購入(事業供用)した場合の計算方法

起業にあたり、200万円の乗用車を7月に購入し、仕事で使い始めた場合の減価償却費の計算は、次にようになります。

2,000,000円 × 0.167 × 6/12 = 167,000円

本日のまとめ

以上、減価償却費の計算について概要を書いてみました。

減価償却については、細かい論点がいくつもあります。

  • 中古資産の耐用年数
  • 購入した資産は、そもそも何に分類されるのか
  • 売却した場合の処理方法
  • 固定資産を修理した場合
  • 仕事にも家庭でも使っている資産の取り扱い

など、実務では判断に迷う事例が多くあります。

こちらについても、今後記事にしていければと考えています。