行政書士業務などでは、お客さま負担の経費を立替払いすることがあります。
立替経費の経理処理、インボイスとの関係について書いてみました。
立替経費の例
お客さまからの依頼を受けて業務を行う上で立替経費が発生するのは、
- 戸籍、登記簿などの取得に要する行政手数料
- 交通費
- 郵送料
などがあります。
これら経費の負担については、事前にお客さまと間で
- お客さま負担
- 当社(当方)負担
のいずれかを決めておくことになります。
お客さま負担の場合、後日代金を請求するため立替金として経理処理をすることになります。
「立替金」以外に「仮払金」とすることも考えられますが、通常、仮払金は後日の精算が予定されている経費の概算払いに用いられます。
ここは立替金とするのが一般的かと思います。
立替金とは
立替金とは、その名のとおり、かかった実費同額のことをいいます。
例えば、交通費が900円のところ、1,000円請求した場合立替金とはなりません。
下の質疑応答にある「課税」とは、消費税の課税のことです。
ホテルの客のタクシー代の立替払
【照会要旨】
ホテルにおいて客のタクシー代や宴会のコンパニオン派遣料等を立替払した場合の課税関係はどうなるのでしょうか。【回答要旨】
出典 : 国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/11.htm
ホテル等が客の依頼を受けて、又は客が自らタクシーや宴会のコンパニオンを呼んだ場合においては、本来それらの役務の提供の対価は客が直接役務の提供者に支払うべきものですから、ホテルが当該対価を客に代わって立替払をし、その旨を明確に区分している場合には、その代金を客から領収しても課税の対象とはなりません。また、その支払はホテルの課税仕入れにも該当しません。
なお、タクシー代やコンパニオン代の実費にホテル等のマージンを上乗せして客から領収する場合には、単なる立替えとは異なりますので、その全額が課税の対象となります。
この回答からわかるとおり、マージンを上乗せすると立替金も含めた全額が売上となります。
売上となった場合、損益計算、消費税額の計算にも影響してきます。
領収書(インボイス)の宛名
立替経費の精算方法は、事前にお客さまに確認をしておくと事務処理がスムーズに進みます。
それぞれの会社によって経費処理のルールがあるはずです。
宛名も同様です。
宛名は当社とする場合、お客さまとする場合が考えられます。
どちらでも良いのであれば、お客さま宛てとした方が当社の事務負担は軽減されます。
というのは、インボイス制度の下では、領収書の宛名が当社となっている場合「立替金精算書」が必要となるためです。
「立替金精算書」は当社が作成することになります。
この書類がないと、お客さまは当社宛ての領収書しかないため、消費税の仕入税額控除ができなくなります。
当社宛てのインボイスのコピーと立替金精算書をセットにして、お客さまに渡します。
なお、インボイスのコピーが大量となる場合には、インボイスのコピーを省略することができます。
その場合の立替金精算書の記載事項も決まっているので、その内容に沿って作成します。
支払先にお客さまの名前でインボイスを発行してもらう場合、立替金精算書は必要ありませんが、社名の誤記には気を付けないとなりません。
社名が違った場合、インボイスの要件を満たさないことになります。
領収書(インボイス)が発行されない取引
立替経費が想定される次の取引については、インボイスの発行が不要とされているため領収書が存在しません。
- 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
- 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
- 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
インボイスは発行されないこれらの取引については、お客さまにおいて帳簿へ一定事項の記載が必要となります。
宛名がないインボイス
また、次の取引については、宛名の記載が不要な簡易インボイスが認められています。
- 小売業
- 飲食店業
- 旅行業
- タクシー業
- 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)
- その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
これら宛名の記載がない簡易インボイスについては、そのままお客さまにお渡しすることになります(請求内容を明確にするため、請求書の控とともにコピーを保存しておきます)。
立替金の経理処理
立替金を支払った場合
郵送料等を立て替えて支払った場合、立替金として仕訳をします。
当社の経費ではないため、通信費等とはしません。
立替金を請求した場合
通常、立替金は売上代金と一緒に請求するはずです。
後日入金される売掛金に振り替えておいた方が、管理は楽になります。
立替金が入金されたとき
売上金と立替金が合算されて入金されてきます。
本日のまとめ
上記が一般的な経費立替金の会計処理になります。
今回は触れませんでしたが、弁護士、税理士等へ報酬などを支払う場合には源泉徴収が必要になりますが、その際の交通費の実費精算については注意すべき点があります。
立替金の経理処理については、自社だけでなく、お客さまも絡んできます。
会社によって方法が異なることも想定されます。
実務的には相互の了解が大切かと思います。