個人事業主が開業祝いをいただいた場合の会計処理

開業にあたり、お祝いをいただくことがあります。
もらったお祝いの会計処理についての話です。

開業祝い

開業祝いとして、現金、商品券、お花等をいただくことがあるようです。

いただく相手先としては、

  • 家族・親族・友人等
  • 事業関係者

が考えられます。

それぞれについて、会計処理をみてみます。

家族・親族・友人等からのお祝い

家族・親族・友人等の個人がお祝いをくれるのは、純粋に開業をお祝いすることが理由かと思います。
基本的には贈与であり、所得税の範囲ではありません。

では、贈与税がかかってくるのか。

この点については、次の相続税法基本通達が参考になります。

(社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い)
21の3-9 個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。(昭50直資2-257改正、平15課資2-1改正)

ここからわかるとおり、

  • 本来は贈与税の課税対象
  • 社会通念上相当であれば、贈与税を課税しない

ということになります。

「社会通念上」というのは、時代、地域、関係性によって一律に決めることはできませんが、一般に数万円程度であれば問題ないかと思います。

現金以外の商品券、お花であっても同様に扱うことができます。

事業関係者からのお祝い

事業関係者、例えば、取引先となる方、同業者等からのお祝いについては、事業に関係する収入として、事業所得に該当します。

事業所得の範囲について、所得税基本通達には、次のように書いています。

(事業の遂行に付随して生じた収入)
27-5 事業所得を生ずべき事業の遂行に付随して生じた次に掲げるような収入は、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入する。(昭55直所3-19、直法6-8、平元直所3-14、直法6-9、直資3-8、平13課個2-30、課資3-3、課法8-9改正)
(1) 事業の遂行上取引先又は使用人に対して貸し付けた貸付金の利子
(2) 事業用資産の購入に伴って景品として受ける金品
(3) 新聞販売店における折込広告収入
(4) 浴場業、飲食業等における広告の掲示による収入
(5) 医師又は歯科医師が、休日、祭日又は夜間に診療等を行うことにより地方公共団体等から支払を受ける委嘱料等
(注) 地方公共団体等から支給を受ける委嘱料等で給与等に該当するものについては、28-9の2参照
(6) 事業用固定資産に係る固定資産税を納期前に納付することにより交付を受ける地方税法第365条第2項《固定資産税に係る納期前の納付》に規定する報奨金

ここから、事業関係者からのお祝いは、事業所得の計算上収入として計上すると考えられます。

また、具体的な事例が国税不服審判所の裁決事例として紹介されています。
小児科医が事業関係者から受領した祝い金が非課税所得または一時所得に該当するのではないかと、不服申立てが行われた事案です。

開業に際して事業関係者から受領した祝金は、事業の遂行に付随して生じた収入であるから事業所得に該当するとした事例 ▼ 裁決事例集 No.63 – 153頁

 請求人は、小児科医開院に際して受領した祝金は、個人又は法人からの贈与であり、非課税所得又は一時所得に該当する旨主張する。しかしながら、民法は私人間の法律関係を規律するという見地に基づいた定めであるのに対し、租税法は、収入の経済的実質を重視し、担税力に応じた課税の実現を期するものであることから、租税法上の贈与の概念は民法上の贈与の概念とは別異に解すべきであるところ、本件祝金は、請求人が新たに事業として医療保健業を開業したことに伴い、請求人の事業関係者から受領したものであることから、経済的実質からみれば事業の遂行に付随して生じた収入というべきであり、租税法上、このような収入についてまで贈与と解するのは担税力に応じた公平な税負担の見地からも相当でなく、請求人の主張する非課税所得又は一時所得には該当せず、事業所得に該当するから、事業所得とした原処分は相当である。(平成14年1月23日裁決)

https://www.kfs.go.jp/service/JP/63/12/index.html

これまではお祝いをもらう立場で見てきましたが、お祝い金を渡す側では、お祝い金を交際費等として費用処理しているはずです。
そのため受取った側でも収入として計上するのが、バランス上妥当かと思います。

お祝い金をいただいたときの仕訳は、
(借方)現金  ××× /(貸方)雑収入  ×××

いただいたのが商品券等の金券である場合の仕訳は、現金に準じて、
(借方)貯蔵品 ××× /(貸方)雑収入  ×××
になります。

ただし、お花、消耗品的な物品をいただいた場合には、
(借方)消耗品費 ×××/(貸方)雑収入  ×××
となり、収益・費用が相殺されることになります。

本日のまとめ

開業祝いというのは、日常発生する取引でもなく、経理処理に戸惑うこともあるかと思います。
参考にしていただければ幸いです。