告訴にあたっての注意点

犯罪被害に遭ったときに告訴をすることに問題はありません。
ただ、故意はもちろんのこと、過失があった場合に責任を問われる可能性があります。
通常問題になることは少ないと思いますが、念のための注意点です。

虚偽告訴罪

刑法に虚偽告訴等の条文があります。

(虚偽告訴等)
第百七十二条 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。

出典:e-Gov

「虚偽告訴等」とあるように、告訴、告発に限らず「その他の申告」も含まれます。

過去の新聞記事を見ると

  • 県立高校の教諭が元勤務先の県立高校の同僚を陥れるため、生徒の個人情報を校外に流出させたように装ったとして、警察に立件された
  • 女性が不倫関係にあった男性医師に報復するため「患者に覚せい剤を売っている」と警察に虚偽の投書をしたとして、警察に逮捕された
  • 痴漢をされたとうそを言ったとして、無職の女が書類送検された

などとあります。
いずれもかなり悪質であることがわかります。

ただ、故意については、未必的な認識であれば足りるとの判例もあることには注意しておく必要があります。

また軽犯罪法では「虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者」も処罰の対象となっています。

民事上の責任

民事上の責任としては、不法行為による損害賠償の可能性があります。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

出典:e-Gov

告訴にあたっては、客観的事実に基づき、相応の注意を払うことが必要となります。

訴訟費用の負担

刑事訴訟法には、告訴に関して訴訟費用の負担についても定めています。

第百八十三条 告訴、告発又は請求により公訴の提起があつた事件について被告人が無罪又は免訴の裁判を受けた場合において、告訴人、告発人又は請求人に故意又は重大な過失があつたときは、その者に訴訟費用を負担させることができる。
② 告訴、告発又は請求があつた事件について公訴が提起されなかつた場合において、告訴人、告発人又は請求人に故意又は重大な過失があつたときも、前項と同様とする。

出典:e-Gov

このようなこともあるということは、知っておいた方が良いかと思います。

本日のまとめ

被害に遭ったときに告訴をすることに問題はありません。
念のための注意点として確認いただければと思います。

ただ、故意で告訴をするのは論外としても、人は一度思い込むとその思い込みから抜け出せないこともあります。
客観的事実を再確認したり、別の視点から見てみるなどの慎重さもときには必要かと思います。