被告訴人が不明の場合の告訴状の書き方

わからない標識

告訴状には定型的な書式は存在しません。
もっとも、告訴事実、犯人に対する処罰意思、告訴人、日付等の記載は必要となります。
ところで、犯人が誰だか分からない場合、被告訴人の記載はどのようにすれば良いでしょうか。

被告訴人がわかる場合

告訴とは、告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を申告して、犯人の処罰を求める意思表示をいいます。
通常は、告訴状を作成して提出します。

告訴は、特定の犯罪事実に対する申告であって、犯人を特定して行うものではありません。
告訴で被告訴人が重要になるのは、相対的親告罪といわれる親族による犯罪(窃盗、詐欺、横領等)を告訴する場合に限られます。

ただ、告訴は犯人を特定して行うものではないとはいえ、被告訴人の記載は重要です。
社内横領が発覚し、従業員から話を聞いたところ不正を認めた場合等では、被告訴人を明示して告訴を行わないと告訴事実が明確になりません。

被告訴人として、

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住居
  • 職業、勤務先

等を書いて被告訴人を特定するのが一般的です。

被告訴人がわからない場合

一方、ネット上の誹謗中傷等で犯人に心当たりがないこともあります。
また、相手の名前は聞いたけれど本名なのか分からないケースもあります。

そのような場合には、被告訴人名を「不明」、「不詳」として構いません。
あるいは「○○と称する者(以下不詳)」などという書き方もあります。

誤った告訴をした場合、虚偽告訴罪の規定(刑法172条)があるほか、民事上の責任が問われる可能性もあります。
また、告訴人に故意または重大な過失があり裁判の結果被告人が無罪または免訴となった場合、訴訟費用の負担が生じることもあります(刑事訴訟法183条)。

心当たりがあっても確証がない場合には、無理に被告訴人名を記載する必要はありません。
告訴事実と関係があるかもしれないトラブル等があれば、別途警察官に説明をして捜査の参考にしてもらうことは可能です。

本日のまとめ

上に記したとおり、告訴は特定の犯罪事実に対して行うもので、犯人に向けて行うものではありません。

被告訴人が不明であっても、告訴事実の内容がしっかりしていれば告訴を行うことは可能です。